今度は下りで、着くとまた歩き出したが、10歩ほどで立ち止まった。
 すると紙袋が持ち上がり、平らな所に置かれたと思ったら、誰かと話し始めた。
 
 修理を依頼しているようだったのでホッとしたが、それも束の間、いきなり黒く汚れた大きな手が紙袋に入ってきた。
 
 止めろ! 
 そんな手で触るな! 
 
 しかし、逃げる間もなくしっかり掴まれて紙袋から出され、カウンターの上に置かれた。
 
 視界が一気に開けた。
 見上げると、少し汚れたエプロンをした男がご主人と向かい合っていた。
 
「う~ん、ちょっと時間がかかるかも知れませんね。3日ほどいただいてもよろしいですか?」

 するとご主人は「3日もですか?」と驚いたような声を出したが、男が何も返事をしないので、仕方なさそうに「お願いします」と小さな声で言って、修理代金を払い、預かり書を受け取った。そして、背中を向けて遠ざかっていった。