そんなことを思い出していると、昨日のことが蘇ってきた。
 久しぶりに真っ青に晴れ渡った気持ちの良い土曜日だった。
 わたしは公園のベンチに座って散歩している人たちを眺めていた。
 週末とあってカップルや家族連れが多かったが、しばらくすると年齢不詳の若作りをした女性がポメラニアンを連れて歩いてきた。ヒールに膝上丈のスカートという格好で、しゃなりしゃなりと歩いてきた。
 男好きのしそうな派手な目鼻立ちをしていた。
 気づかれないようにちらちら(・・・・)と見ていると、ぬいぐるみのような容姿で人気のある小型犬を見せびらかすように抱え上げて、自分の顔に近づけた。ポメラニアンに負けない魅力があると誇示するかのように。
 
 距離が2メートルほどになった時、ポメラニアンと目が合った。と思ったら、いきなりウインクされた。魅力的なウインクだった。
 わたしはどうしてか照れて視線をそらし、クリーム系のふわふわとした毛並みに目をやった。ペットに興味のないわたしでも思わず触りたくなるくらい可愛い毛並みだ。
 
 わたしの前を通り過ぎたところで飼い主の女性が立ち止まって、ポメラニアンを地面に下ろした。
 知り合いに出会ったようだ。
 中年の小太りな女性がトイプードルを連れていた。この女性も派手な化粧をしている。着ているものも高そうだ。栗色のくるくるとした巻き毛が可愛いその犬が自慢のようで、ちゃん付けで呼んで毛を撫でている。
 しかし、そのうち会話に夢中になってきたらしく、犬のことはほったらかしになった。身振り手振りを交えて時々大きな笑い声を立て始めた。最近買ったブランド物の話や韓流スターの話だった。
 聞くとはなしに耳にしていると、構ってもらえなくなったポメラニアンが近づいてきて、わたしの前で立ち止まった。
 そして、くりくりっとした目で見つめられた。