協力してくれるかな?
 
 心配になったわたしは目を真後ろに動かして、上目遣いで様子を窺った。
 すると、すぐ後ろの乗客が不満顔でご主人を見つめていた。
 無理に乗り込まないでよ、というような険しい表情だった。
 しかし、ご主人にはその顔は見えていなかった。
 お尻を突き出して後ろ向きに乗り込もうとしていたからだ。
 何がなんでも乗り込むんだというように、ぐいぐいぐいぐい、お尻に力を込めて押し込もうとしていた。
 
 わたしは乗り口の端ギリギリの所で彼女を支えた。
 油断すると落ちそうだったので、力一杯踏ん張って支えた。
 
 なんとしてもご主人をこのバスに乗せなければ!
 
 主君に仕える忠実な家来のように、必死の形相で踏ん張った。
 
 う~! 
 
 一層力を入れてお尻を押し込もうとしているご主人を支えて、わたしも必死になって頑張った。
 すると、一歩バスの中に入ることができた。
 
 やった!
 
 なんとか乗り込めた。
 
「ドアを閉めます」

 運転手の声と共にドアが閉まった。