深呼吸をすると落ち着いてきたので、ゆっくりと周りを見回した。
 すると、いろんな靴が見えた。
 紳士靴、
 ハイヒール、
 運動靴、
 きれいな靴、
 汚れた靴、
 おニューの靴、
 よれよれの靴、
 いろんな靴が信号待ちをしていた。
 
 それにしても地面が近い。
 こんなに目の位置が低いと……、
 
 ワッ! 

 いきなり目の前に犬が現れた。
 顔中毛だらけの犬だった。
 茶色っぽいというか、ゴールドっぽいというか、そんな色をしていた。
 
 なんという名前だったかな?
  
 思い出そうとしたが、何も浮かんでこなかった。
 首を傾げていると、犬も首を傾げて不思議そうに見つめていたが、突然鼻を近づけてきてニオイを嗅いだ。
 クンクンクンクンと嗅いだ。
 そして、顔を上げた。