田んぼから離れた道の真ん中を──また溺れたくないので──ひたすら歩いて。大祇小学校の前の丁字路を直進して。急な山道を登った。そして、右側に階段が見えた。赤い手すりを伝って下りた。
階段を下りきった先の左に、見慣れた真っ赤な鳥居。頭上に縦書きで「大祇神社」と書いてある。境内に着いた。ゴミ一つ落ちていない。祭りが前日にあったとはとても思えない、不自然なほどの気配のなさだった。
昨日、おおかみになった村人や子供たちは、外にいたなぞのヒトたちに襲いかかっていた。数十人以上の犠牲があったに違いない。もしかしたら皆殺しになったのかも。けれど、死体はおろか血のいってきも落ちていない。境内をあちこち見て回ったが、本当に綺麗になっている。まるでそんなことは初めから起こっていないかのように。
社務所に声をかけてみた。中にはおじさんとおじいさんの間くらいの神職さんがいた。
「あの、相原っていいます。樫田の沙羅さんを探してるんですけど」
「ああ、沙羅ちゃんね。来ていますよ」
そういうとどうぞ、と社務所に通された。玄関で靴を脱いで神職さんにつれられ、沙羅のおじいちゃんの家も兼ねた社務所の中を歩いた。二階に上がり、みっつ目の部屋の襖の前で神職さんが呼びかけた。
「沙羅さん。お友達が来ていますよ」
「ゆうちゃん!」
しゃっと、ふすまが勢いよく開く。
「もう大丈夫?」
「大丈夫って?」
「……覚えてないの?」
神職さんはいつの間にかいなくなっていた。
入って、と沙羅が促した。
「いかん、沙羅。その子は入れん」
階段を下りきった先の左に、見慣れた真っ赤な鳥居。頭上に縦書きで「大祇神社」と書いてある。境内に着いた。ゴミ一つ落ちていない。祭りが前日にあったとはとても思えない、不自然なほどの気配のなさだった。
昨日、おおかみになった村人や子供たちは、外にいたなぞのヒトたちに襲いかかっていた。数十人以上の犠牲があったに違いない。もしかしたら皆殺しになったのかも。けれど、死体はおろか血のいってきも落ちていない。境内をあちこち見て回ったが、本当に綺麗になっている。まるでそんなことは初めから起こっていないかのように。
社務所に声をかけてみた。中にはおじさんとおじいさんの間くらいの神職さんがいた。
「あの、相原っていいます。樫田の沙羅さんを探してるんですけど」
「ああ、沙羅ちゃんね。来ていますよ」
そういうとどうぞ、と社務所に通された。玄関で靴を脱いで神職さんにつれられ、沙羅のおじいちゃんの家も兼ねた社務所の中を歩いた。二階に上がり、みっつ目の部屋の襖の前で神職さんが呼びかけた。
「沙羅さん。お友達が来ていますよ」
「ゆうちゃん!」
しゃっと、ふすまが勢いよく開く。
「もう大丈夫?」
「大丈夫って?」
「……覚えてないの?」
神職さんはいつの間にかいなくなっていた。
入って、と沙羅が促した。
「いかん、沙羅。その子は入れん」