一華が連れていかれた後、屋敷のものたちによって片付けられた席で再び銀鉤の儀が執り行われた。鳳の着物を着た朱音は改めて天羽の前の天女たちに婚姻の宣誓をし、二人で杯を交わした。その時に脳裏に浮かんだのは、玉のような赤ん坊を抱く自分と、それをとろけた眼差しで見つめる天羽の姿だった。

(これも先見の力なのかしら。もしそれが本当になったら、とても幸せなことだわ。お父さまにご恩返しの形でお知らせ出来ないのが、心苦しいけど……)

しくりと胸は痛むけれど、天女たちの降らせる星の輝きに癒されて、肩を抱き締めてくる天羽の真っ直ぐなまなざしにときめきが収まらない。
ああ、出来斬ることなら。
彼が悲しむ未来を、もう見なくて済みますように。
そして思う。
そんな未来を見てしまっても、自分が回避できますように。
そのために与えられた先見の力なら、存分に使えるように心がけていく。

(だから、日輪月輪あまたの星よ。私を天羽さまの妻にしてくださって、ありがとうございます)

決意新たに、天羽を見つめる。見つめ返す天羽の瞳は、深くてやさしくて。




未来永劫、あなたに幸が、ありますよう。




祈りを込めて、微笑んだ。