「、、、、」
「杏里、どうした?何か嫌なことでもあったか?」
「、、、、」
目の前にいるイケメンは、固まる私をよそに話し出す。まるで、友達のような話しぶり。
、、、、初対面だよね???
ふわふわの蜂蜜色の髪。髪と同じ色の瞳。
無意識に一歩後ずさる。
後ろには扉。
目の前には不審者。
よし、、、、!
リビングに走って、倉庫に置いていた刺股(さすまた)を持って、イケメンに向かって走る。
「え、ちょ待って!別に不審者じゃ、、、、ぐぇ」
思っきり壁に押し付けた。
部屋を見渡す。別に荒らされている様子はなかった。だが、いない。
何時もなら私が帰ってくるとゲージの中をカンカンするのに、今日はそれがない。
ゲージを見ても何もいない。
自分でも青ざめていくのが分かる。
「おーい、杏里?」
まさか、この不審者が千影を拉致、、、、いや、食べた?
「食べた、、、、?」
「え?」
「ひよこ、ゲージにいない。ひよこ、食べた?」
震える声。
刺股を持つ手も震える。
目の前の不審者は何故かニコニコしている。
「オレ、千影」
、、、、へ?
ちかげ、千かげ、千影、、、、千影!?
「千影、、、、?」
「そう!杏里が学校行ってる途中、気が付いたら人間になってた」
「はぁ、、、、」
間抜けな返事が漏れる。
いやいや、アニメの世界じゃないんだから、ひよこが人間になるってありえないし?
「それがなったんだよな〜!」
此方の心情を悟ったようにふふんと嬉しそうに言う。
絶対嘘だ、、、、と思った瞬間、ぼんっと白い煙が不審者を包む。煙が晴れ、そこに現れていたのは一匹のひよこ。
「、、、、うそ」
ズルリと腰が抜けて床に座り込む。
「そういうことで、よろしく!」
「あ、うん」
千影は喋った。
そう、喋ったのだ。
ひよこが、喋った。
千影は会話が出来るようになって嬉しいのか、私の目の前をクルクル回っている。
もう、この可笑しな状況を受け入れるしかないだろう。
「お母さんになんて言ったら良いんだろう、、、、」
そっと頭を抱えたのだった。