思えば、私と千影の出会いは本当に偶然だった。
たまたま入った路地裏で、捨てられたダンボールを拾った。
ダンボールに入っていたのは一匹のひよこ。
千影は捨て犬や捨て猫ならぬ、捨てひよこだった。
少しでもつついたら死んでしまうんじゃないかって思うくらい、衰弱しきっていた。
見捨てられなくて、家で飼うことにした。
お母さんは言ったんだ。
「お父さんには内緒ね」
お父さんは、お酒に溺れてよく私達に暴力をふるっていた。
何でそんなことするの?痛い!痛い!って叫んでも、五月蝿い!って怒られて叩かれる。
お母さんは泣きながら止めていた。お父さんが怒ると、お皿も本も投げてくる。たまに瓶で殴ってくる時もある。
ガシャーン。
バリーン。
私はただ、部屋の隅に丸まって耳と目を塞いで嵐が通り過ぎるのを待つだけ。
小学生になる前にお母さんとお父さんは離婚した。
私と千影は勿論、お母さんについて行った。
千影は何時も傍にいてくれた。嬉しい時、楽しい時、悲しい時、辛い時。
何時も心配そうに私の手に乗っかる。言葉は通じなくても、心配してくれているんだって思える。
笑顔になると千影は私の頭の上に乗っかって、移動する。
それなのに、、、、
「よ、杏里。学校楽しかったか?」
目の前にいるイケメンは誰?