「あそこまですべてを拒絶することはないが……。あれはあれで一種の防衛反応だろう。お前にもお前なりの守り方があったんだ」
「月冴さま?」
そう言って月冴は語ることに飽いたようで、少女の上から退くと縁側で寝転がった。
最初の荒々しさはもうない。
今はおだやかな気持ちで一緒にいられる。
委縮する感覚はないと、くすぐったさに少女は目を伏せた。
(前向きに。前向きに考えたら私はなにをしたいのかな)
かつての願いは養父に振り向いてもらうことだった。
村でよく見かける子どもをかわいがる親のように少女を見てほしかった。
養父との距離が出来ても、その望みが生きているかもしれない。
長年抱き続けた”親としての顔”を見たかった。
それが起因となり、一心に役に立とうと駆けまわっていた。
ようやく腑に落ちたが、だからといって割り切れるものではないと喉の詰まりに指を置いた。
「ひとつ、わがままを言ってもいいですか?」
「なんだ?」
このつっかえを取るには時間がかかる。
模索しながら少女は欲求と向き合い、震える声で月冴に願い出た。
「膝枕、していただけませんか?」
「……は?」
少女の願いに月冴はすっとんきょうな声をあげる。
しかめっ面に少女は間違ったことを言ったと慌てて口元を隠し、「なんでもない」と慌てて身体を引っ込めた。
(なにを言ってるの! 月冴さまにとっては戯れでしかないのに! 私の抱く想いと同じものが返ってくるわけじゃないのに……)
戯れなのだから、期待した分だけまた鈍くなるしかない。
それならば最初から気づかないでいようと、少女は月冴を遠ざけようとした。
異常な自己嫌悪であることに気づかない。
それが少女にとっての当たり前だったので、期待よりも気持ち悪さが上回った。