禍津日神は、帝の用意した破魔の刀によって滅された。通常であれば瘴気に阻害されて通らないであろう攻撃でも、志成様の闇の力で無理やり瘴気を破ってしまえば本体まで届くだろうという計算で……唯一可能かもしれない禍津日神を倒す方法として、考えられていた最中だったという。更に私の歌声が瘴気をある程度滅し、刀が通りやすくなったため、良い方向に転んだのだ。
志成様は怪我を負いつつも助かり……生存が絶望的だと思われた正行も、奇跡的に一命を取り留めた。
それでも基本は寝たきりで、以前と同じようには動けない。禍津日神と一体化した影響なのか……私の歌を持ってしても、それ以上の治癒は不可能であった。
「……暁烏志成。お前は絶対に僕を殺すと思っていたのに、どうして僕の魂を避けるようにして切ったの? 妻を奪おうとした男だよ?」
正行は禍津日神の封印を解いた罪人として、罪を償い生きる。最後に面会を許された際、正行は私ではなく、私の付き添いで訪ねていた志成様との会話を望んだ。
志成様は正行と会話なんてしたくないのでは? と思ったが、案外真面目に正行の質問に答えてくれた。
「確かにお前は面倒くさい奴だ。和音は俺の妻なのに、返せ返せと仕事中まで煩い。しかし俺も、聞く者の心に光を差す和音の歌に、魅了された男。お前の気持ちが一番分かるのは、恐らく俺だ。そう考えれば、切れなかった」
「ハハ……身内以外には冷酷な暁烏の当主様が? お優しいことで。和音姉様に影響されたの?」
「あの鷹宮の家で唯一和音を庇い、仕事でも同僚だったお前は、無意識に身内判定したのかもしれないな。今後は名前の通り、一般常識に照らして正しい行いをして過ごせよ。正行」
志成様は正行にそれだけ伝えると「あとは二人でゆっくり話すといい」と言い……私の頬に口付けてしっかり威嚇してから、席を外した。しかし正行は予想外なことに、私に話す事は無いと言う。本当に無いのか私が詰め寄ると、ぽつりと「正しい行い……ね」と呟いた正行は、淡く笑ってみせた。
「ごめん一個だけあった。和音姉様、結婚おめでとう」
志成様は怪我を負いつつも助かり……生存が絶望的だと思われた正行も、奇跡的に一命を取り留めた。
それでも基本は寝たきりで、以前と同じようには動けない。禍津日神と一体化した影響なのか……私の歌を持ってしても、それ以上の治癒は不可能であった。
「……暁烏志成。お前は絶対に僕を殺すと思っていたのに、どうして僕の魂を避けるようにして切ったの? 妻を奪おうとした男だよ?」
正行は禍津日神の封印を解いた罪人として、罪を償い生きる。最後に面会を許された際、正行は私ではなく、私の付き添いで訪ねていた志成様との会話を望んだ。
志成様は正行と会話なんてしたくないのでは? と思ったが、案外真面目に正行の質問に答えてくれた。
「確かにお前は面倒くさい奴だ。和音は俺の妻なのに、返せ返せと仕事中まで煩い。しかし俺も、聞く者の心に光を差す和音の歌に、魅了された男。お前の気持ちが一番分かるのは、恐らく俺だ。そう考えれば、切れなかった」
「ハハ……身内以外には冷酷な暁烏の当主様が? お優しいことで。和音姉様に影響されたの?」
「あの鷹宮の家で唯一和音を庇い、仕事でも同僚だったお前は、無意識に身内判定したのかもしれないな。今後は名前の通り、一般常識に照らして正しい行いをして過ごせよ。正行」
志成様は正行にそれだけ伝えると「あとは二人でゆっくり話すといい」と言い……私の頬に口付けてしっかり威嚇してから、席を外した。しかし正行は予想外なことに、私に話す事は無いと言う。本当に無いのか私が詰め寄ると、ぽつりと「正しい行い……ね」と呟いた正行は、淡く笑ってみせた。
「ごめん一個だけあった。和音姉様、結婚おめでとう」