(何!? 苦しい……)
咄嗟のことで屈むことすら出来なかった私は煙を吸い込んでしまい咳き込む。
「──姉様」
そんな中、正行の声が聞こえたような気がした。目すら開けられない私の体は何かに掴まれるようにして捉えられて、頬には風を切る冷たさを感じる。
「和音姉様」
やはり正行の声だ。行方不明だったはずなのに、鷹の姿で煙の中から連れ出してくれたのだろうか? 煙たさが無くなって目を開けた私だったが……状況は私の予想とは大いに異なっていた。
「志成! どうして私を先に庇った、こういう時は妻を優先するだろう!?」
「では帝は今から全力で、自力で逃げてください。……流石にコレ相手に帝を庇い、和音奪還は不可能です」
遥か下に見えるのは、こちらを見上げつつ言い合いする帝と志成様。志成様は刀を抜いて、それに闇の力を纏わせている。
そして私を捉えているのは……鷹の足ではない。禍々しい瘴気を放つ黒い腕のような物体だった。それは本体と思われし巨大な黒い塊に繋がっている。
「和音姉様、やっと見つけた」
黒い塊から、正行の声がする。私は信じられない気持ちで問いかけた。
「正行……なの?」
「そうだよ。これからはずっと一緒にいられるから安心してね」
「和音! それはただの正行じゃない。──禍津日神と一体化している!!」
まさかの状況に目を見張る。そして私を捉える正行と思われし物体も、志成様の言葉を否定しない。
(禍津日神の封印が解けるのは、贄を差し出す冬以降のはずなのに!?)
「光の皇族の力を求める禍津日神と、その血を引く姉様が欲しい僕。利害関係の一致だよ。僕が禍津日神になり姉様を貰えば、みんな幸せな結末を迎えられる」
「だから禍津日神の封印を解いたの!?」
「そう。言ったでしょう? 絶対に姉様を贄にはさせないって。姉様は禍津日神となった僕の花嫁になるんだよ」
春に会った時に彼が言っていた「良い方法を見つけた」とはこのことだったのだろうか。だから仕事の合間に禍津日神の封印を解いて……この一ヶ月、行方不明のだったのだろう。
「そんなの駄目、私は志成様の妻なのよ!」
「煩い! 本物の姉様なら、笑って頷いてくれるはずだ。僕の和音姉様だったら……!」
「きゃッ!」
急に私を捉える黒い腕のような部分が左右に大きく振られる。その動きで下からこちらに攻撃の狙いを定めている人々の動きは制限された。
咄嗟のことで屈むことすら出来なかった私は煙を吸い込んでしまい咳き込む。
「──姉様」
そんな中、正行の声が聞こえたような気がした。目すら開けられない私の体は何かに掴まれるようにして捉えられて、頬には風を切る冷たさを感じる。
「和音姉様」
やはり正行の声だ。行方不明だったはずなのに、鷹の姿で煙の中から連れ出してくれたのだろうか? 煙たさが無くなって目を開けた私だったが……状況は私の予想とは大いに異なっていた。
「志成! どうして私を先に庇った、こういう時は妻を優先するだろう!?」
「では帝は今から全力で、自力で逃げてください。……流石にコレ相手に帝を庇い、和音奪還は不可能です」
遥か下に見えるのは、こちらを見上げつつ言い合いする帝と志成様。志成様は刀を抜いて、それに闇の力を纏わせている。
そして私を捉えているのは……鷹の足ではない。禍々しい瘴気を放つ黒い腕のような物体だった。それは本体と思われし巨大な黒い塊に繋がっている。
「和音姉様、やっと見つけた」
黒い塊から、正行の声がする。私は信じられない気持ちで問いかけた。
「正行……なの?」
「そうだよ。これからはずっと一緒にいられるから安心してね」
「和音! それはただの正行じゃない。──禍津日神と一体化している!!」
まさかの状況に目を見張る。そして私を捉える正行と思われし物体も、志成様の言葉を否定しない。
(禍津日神の封印が解けるのは、贄を差し出す冬以降のはずなのに!?)
「光の皇族の力を求める禍津日神と、その血を引く姉様が欲しい僕。利害関係の一致だよ。僕が禍津日神になり姉様を貰えば、みんな幸せな結末を迎えられる」
「だから禍津日神の封印を解いたの!?」
「そう。言ったでしょう? 絶対に姉様を贄にはさせないって。姉様は禍津日神となった僕の花嫁になるんだよ」
春に会った時に彼が言っていた「良い方法を見つけた」とはこのことだったのだろうか。だから仕事の合間に禍津日神の封印を解いて……この一ヶ月、行方不明のだったのだろう。
「そんなの駄目、私は志成様の妻なのよ!」
「煩い! 本物の姉様なら、笑って頷いてくれるはずだ。僕の和音姉様だったら……!」
「きゃッ!」
急に私を捉える黒い腕のような部分が左右に大きく振られる。その動きで下からこちらに攻撃の狙いを定めている人々の動きは制限された。