詩織と双葉は性格こそ反対だが、仲は良かった。

 だからこそ、お互いがすれ違っている神楽と文の関係に耐えられなかった。

 まだ城の中がどうなっているのかは分からない。

 神楽がどこにいるのか分からない。

 だけど、なんとなく神楽の居場所は分かった。

 とある襖を礼法など無視して思いっきり開けると、中にいた神楽は勢いよくこちらを振り向いた。


 「詩織、今は仕事中なのだが」

 「神楽様、緊急事態です!ほら、行きますよ」


 詩織は神楽の抗議を無視して、神楽を連れて元の部屋へと戻った。


 「詩織から緊急事態だと呼び出されたのだが、何があったんだ?」

 「緊急事態なのは神楽様と文様の関係ですよ」

 「俺と文の関係が緊急事態?」


 全く分かっていない神楽の様子に詩織は、


 「双葉、説明よろしく」


 双葉に任せた。


 「おい。自分で起こしているのだから、自分で説明しなさい」

 「姉上、わたくしも助言いたしますから、たまには姉上から説明したらどうでしょうか?」


 神楽と双葉からそう言われてしまったら、説明するしかない。

 (でも、これ私が説明すると余計こじれるのでは?)

 今までの詩織が仲立ちして余計に場を乱した記憶が蘇る。

 (私が入るよりも当事者たちに解決してもらいましょう)


 「申し訳ありません。私、急用ができたみたいです。双葉、外に行きましょう。伝えないと分からないこともあるのですよ」


 詩織は誰にとは言わずに言葉を送って外に出た。

 (伝えないと伝わらないこともあるのですよ)

 家族だから、兄妹だからこそ、言葉で伝えないと分からないこともあることを神楽はしっているのだろうか?

 その答えは再び襖が開くときに知ることとなるだろう。