十二時、有紗の働く会社のフロアで昼休みを知らせる鐘が鳴った。

「いまなんて?」

 トロロの拒否犬画像が有紗に届いた頃、有紗もまた送られてきたトロロのように盛大に顔をしかめていた。

「白石さん、十二時五十分からのオンラインミーティングに出てください。って言いました」
「なんでそんな半端な時間に?」
「先方が緊急で相談したいことがあるって言うから……」
「うちの休み時間、十三時までなんだけど?」
「そうですね……。そもそもやること多くて休み時間取ってる時間ないんですけどね……」
「ソウダネ」
「俺、今日くらいはランチ外食出来ると思ったんですけどね……」
「ワタシモダヨ」

 同僚が悲しい後姿を見せて立ち去っていく姿を見送ると、有紗は引き出しからカップ麺を取り出してお湯を注ぎに行った。

「仕方ない。今日も席でご飯食べるかー……しくしく」

 麺にお湯を注いで待つ三分間の間にスマホを見ると、百花からメッセージが送られてきていた。
 一枚目はスパゲッティ。

「うわ~! 良いな~! 採れたてトマトのミートソーススパゲッティ!!」

 そして二枚目は拒否犬画像だ。

「アハハ! なにこれウケる! トロロってば、アホ面すぎる!! かわいい〜! ねえ、ちょっとこれ見てみてー! 癒されるんだけど!」

 有紗は同僚に画像を見せに行って、皆で大爆笑する。

 しかし、三分後に真面目に仕事に戻り、キーボードを叩きつつカップ麺を啜る。

「私も美味しい麺料理が食べたい……。いや、カップ麺も十分美味しいし好きなんだけど……そうじゃないんだよ……」

 なお悲しいことに、昼休み時間中の出来事である。

「いやでもお昼頑張れば、今日は早く帰れる! 早く帰る!!」