「ねぇねぇ!! 20日に五十川で花火大会があるらしいよ!」
――朝、藍と二人で学校に登校すると、みすずはスマホを持ったまま間に入ってきた。
すると、藍はいち早く反応する。
「へぇ〜。20日って……土曜日か」
「そそっ。ねぇ、みんなで一緒に花火大会行かない?」
「うわぁ、行きてぇ〜」
「みんなって誰?」
私は首を傾けながら質問をすると、みすずは藍に両手を合わせた。
「石垣くん。この通り一生のお願い! 坂巻くんを花火大会に誘って欲しいの」
私と藍は、そこでみすずの目的を知る。
「ははぁ〜ん。みすずは雷斗狙いか」
「えへへ。実はそうなの。だから、坂巻くんと一緒に花火大会へ行けたら隙を見て二人きりになりたいなぁ〜……なんちゃって!!」
みすずは可愛らしく微笑み頬に両手を添える。
最近坂巻くんといい感じだったし、私自身もみすずの恋が成就して欲しい。
「おっけー。後で雷斗を誘ってみるよ。みすずたちが二人きりになれるように頑張るよ。な、あやか」
「うん。もちろん!」
返事をすると、ちょうどその横にひまりちゃんが通りがかったので声をかけた。
「ねぇ、ひまりちゃん!」
「ん?」
「今度の土曜日にみんなで花火大会に行くんだけど、一緒に行かない?」
自分の中の”みんな”にはひまりちゃんも含まれている。
藍はあまり仲良くないみたいだから嫌と言うかもしれないけど、この花火大会がきっかけで仲良くなれるかもしれないし。
それに、みんなも納得してくれるだろうと思ってこの流れのまま誘った。
「……え、私も?」
「うん。日本の花火って個性溢れていてきれいなんだよ。ぜひ一度楽しんでもらいたいなぁ〜と思って」
頭の中にみんなで打ち上げ花火を見ている姿を思い浮かべながら提案するが、彼女はうつむいてポツリと言う。
「……ごめん。実はその日、大事な用事があるの。……藍もね」
「ひまり! ……ちょっと話がある」
藍は不機嫌な声を上げると、ひまりちゃんの手を引いて廊下へと向かった。
私とみすずは状況が把握できず目は点に。
「石垣くん、なんか怒ってた?」
「う、うん……。私にもそう見えたけど……」
こうやって何度もひまりちゃんを外へ連れ出すことに引っかかっているけど、次第にひまりちゃんが藍の秘密を握っているのではないかと思うようになっていた。
でも、それは二人だけの問題だから触れないようにしている。