────三年前の七月八日。

 『熱に浮かされてつい』と言い訳をすればよかったのかもしれない。
 『熱のせいでなにも覚えていない』と、しらばっくれればよかったのかもしれない。


 今となっては後悔ばかり。

 それでもあのときは、恭吾くんに嫌われることよりも、恭吾くんが誰かのものになることほうが、少しだけ怖かったのだ。
 
 まだ幼かったおれは、ああすることでしか自分の気持ちを救えなかったのだ。



きみの名前を書いた短冊は、今年も飾れず
暗くてさみしい引き出しの奥。



────────────
世界で一番憎らしい【完】