『ざまあみろ』

 むせかえるような暑さの中で、目の前の唇がたしかにそう動いた。


 あれは三年前、中二の夏――七夕祭りの余韻がまだ抜けきらない七月八日のハナシ。

 湿気を帯びた空気が充満する重苦しい室内。
 床に落ちた体温計、ネクタイ、それから空っぽのペットボトル。
 制服のシャツから覗く汗ばんだ肌。
 ベッドからだらりと下がる青白い手。

 その手が力なく助けを求めてきたとき、無意識に強く握り返してしまった。
 ─────まさか、それが罠だと気づくはずもなく。

 
 
 憎らしいあの笑顔を、今でもときどき夢に見る。