キャラブレすごかったですよね、長谷川くん。
ずっとインテリ無口で通してきたのに、なんか急におしゃべり探偵をやり出したりして。妙に済ましてるところとかを見ていると、そういう人になりたい憧れでもあったのかなって思います。
あ、ごめんなさい。長谷川 聡輔さんの他己紹介を始めます。
ええと、ゼミで──っていうのはどうでもいいですよね。じゃあ不正をしていたってことにフォーカスを当てたほうがいいですか。
……私としては長谷川くん自身のことについてちょっと話したいです。なんていうか、彼は陽キャになりたかったけどなれなくて、でも諦めきれないから一応インテリの枠をやってます、みたいな人なのかなと思ってました。
やたらと人を分析したがる人で、しかもそれを当たってると疑わない人です。しかも人に披露したいところまでがワンセットっていう感じでしょうか。私も人を分析するのは好きなんですけど、長谷川くんの場合は「すごい」って思ってもらいたい欲が強すぎるんです。
だから、鼻につくというか、嫌われやすいのかなって。自分で気付いてないところを見てたら指摘したほうがいいのかなって思ったんですけど、変に恨まれるのは怖いですから避けました。
長谷川くんとは前に飲み会で会ったことがあるんです。
私の場合は誘われて、ですね。仲のいい友人が花屋さんと知り合ったみたいで、そこで私にも声かかったんです。就活生同士、励まし合っていこうみたいな目的があったと聞いています。
どれぐらい集まったのかな、ちょこちょこ人が抜けたりしていたんですが最終的には二十人は余裕で集まっていたと思います。
花屋さんとは話せませんでした。すごく人気で、とにかく人に囲まれてました。私も話してみたいなとは思ってたんですけど無理でしたね。
ただ、花屋さんが「参加人数は多ければ多いほうがいい」って言ってるのが聞こえたんですけど、あれってどういう意味だったんだろう。あ、だから参加費が結構集まったらしんです。
当日のお店は花屋さんが予約してくれたと聞きました。かなりオシャレでびっくりしちゃいましたね。就活スーツ着た大学生が来るようなところではない感じで。でも知り合いがいるのか、お店のオーナーさんが個室を用意してくれて、だから周りの目はあまり気にせず楽しめたってところがありました。
……え、オーナーさん? うーん、私から見るとイケおじ的な人だったと思います。
実際の年齢がどうなのかわからないですけど、私たちなんかよりは全然上です。どういう繋がりがあるんだろうって思ったりはしましたけど、そこは深く聞くようなこともできないじゃないですか。だって、花屋さんと会ったの、その日が初めてですから。
友人が途中で帰っちゃって。どうしようかなと思ってるときに長谷川くんを見かけました。最初から最後まで端っこのほうで一人呑んでたんだと思います。あれはお酒だったのかな。
私もあまり場に馴染めなくて一人でチビチビご飯食べてたので、おひとり仲間ってことで長谷川くんに声をかけようかなと思ったんです。
だけど彼、こう話しかけにくいオーラがあって。
周囲に興味がないって雰囲気がよく伝わってきてました。だからこっちから話しかけたとしても、無視されるか、適当にあしらわれるかの二択しかなかったのでやめました。
あ、あと、ずっと花屋さんのことを見てたんですよ。
分析目的っていうよりも好意があったんじゃないかなって思うんですけど、本人に確認しないとわからないところですよね。ただ、花屋さんを見る目が、なんかちょっとこう、気持ち悪かったなとは感じました。友好的じゃないんですよ。気になってるような目をしておきながら、急に軽蔑したような目もしたりして。この人、ころころ印象が変わるなとは思ってました。
こっちのことなんて眼中になかったでしょうね。覚えていたら、それなりの反応をすると思うんですけど、全く。そもそも、今日の長谷川くんって一度でもこっちのことを見たのかな。ずっと花屋さんに意識があったみたいで。まあ華があればそっちを見て当然ですよ。雑草に興味を抱く人なんていません。それと、鬼塚くんのことをやたら敵対視してましたね。
多分、二次の集団面接で一緒に飲み会に行ったってことが自慢に聞こえたんじゃないですか。実際それはあったと思いますけど。こっちはひやひやでした。鬼塚くんが突っかかる度に、長谷川くんの本性が出てくるんじゃないかって。
あの人、切れたらもうどうにもならなかったと思います。軽く、人が一人死んでてもおかしくなかったのかなと。
開き直りはよくなかったですよね。悪いと思ってないんだろうなってことだけは伝わってました。ただ、そういう意識のまま花屋さんに近づいてたと思うと怖いです。だって、罪の意識がないですから。
長谷川くん、花屋さんの個人情報をかなり入手していたようです。お金で買ったりもしてたみたいですから、よっぽど花屋さんのこと好きだったんだろうなと。
ただ、表には一切出さなかったところを見る限りすごいなとは思いました。人って、頭の中で何考えてるか、わからないものですよね。そういう意味では、あの人の頭の中ってどうなってたんだろうってちょっと気になります。
あ、推薦の話ですよね。決まってます。あの人……名前は伏せたほうがいいですか。あれ、番号で発表する感じなんですか。ああ、だからそれぞれの名前の下に番号が振られていたんですね。どういう意味があるんだろうと気になってはいたんです。匿名他己紹介の順番にしては、私には当てはまらなかったので。
推薦したい方は五番の方です。どういう情報があったとしても、私は変わらなかったと思います。最初から気さくで、優しい方でしたから。こういう人が会社にいてくれたら、すごく安心するなと思ったんです。……すみません、あまり説得力がない内容で。
ただ推薦したい気持ちは強いですし、正直、私でなくていいと思っています。
内定者が一人で、それが自分以外だとしたらそれは結構きついところはあるんですが、ただ、あの人がいいです。
聖母のように包み込んでくれて、めった刺しにしていったあの人が──。
ずっとインテリ無口で通してきたのに、なんか急におしゃべり探偵をやり出したりして。妙に済ましてるところとかを見ていると、そういう人になりたい憧れでもあったのかなって思います。
あ、ごめんなさい。長谷川 聡輔さんの他己紹介を始めます。
ええと、ゼミで──っていうのはどうでもいいですよね。じゃあ不正をしていたってことにフォーカスを当てたほうがいいですか。
……私としては長谷川くん自身のことについてちょっと話したいです。なんていうか、彼は陽キャになりたかったけどなれなくて、でも諦めきれないから一応インテリの枠をやってます、みたいな人なのかなと思ってました。
やたらと人を分析したがる人で、しかもそれを当たってると疑わない人です。しかも人に披露したいところまでがワンセットっていう感じでしょうか。私も人を分析するのは好きなんですけど、長谷川くんの場合は「すごい」って思ってもらいたい欲が強すぎるんです。
だから、鼻につくというか、嫌われやすいのかなって。自分で気付いてないところを見てたら指摘したほうがいいのかなって思ったんですけど、変に恨まれるのは怖いですから避けました。
長谷川くんとは前に飲み会で会ったことがあるんです。
私の場合は誘われて、ですね。仲のいい友人が花屋さんと知り合ったみたいで、そこで私にも声かかったんです。就活生同士、励まし合っていこうみたいな目的があったと聞いています。
どれぐらい集まったのかな、ちょこちょこ人が抜けたりしていたんですが最終的には二十人は余裕で集まっていたと思います。
花屋さんとは話せませんでした。すごく人気で、とにかく人に囲まれてました。私も話してみたいなとは思ってたんですけど無理でしたね。
ただ、花屋さんが「参加人数は多ければ多いほうがいい」って言ってるのが聞こえたんですけど、あれってどういう意味だったんだろう。あ、だから参加費が結構集まったらしんです。
当日のお店は花屋さんが予約してくれたと聞きました。かなりオシャレでびっくりしちゃいましたね。就活スーツ着た大学生が来るようなところではない感じで。でも知り合いがいるのか、お店のオーナーさんが個室を用意してくれて、だから周りの目はあまり気にせず楽しめたってところがありました。
……え、オーナーさん? うーん、私から見るとイケおじ的な人だったと思います。
実際の年齢がどうなのかわからないですけど、私たちなんかよりは全然上です。どういう繋がりがあるんだろうって思ったりはしましたけど、そこは深く聞くようなこともできないじゃないですか。だって、花屋さんと会ったの、その日が初めてですから。
友人が途中で帰っちゃって。どうしようかなと思ってるときに長谷川くんを見かけました。最初から最後まで端っこのほうで一人呑んでたんだと思います。あれはお酒だったのかな。
私もあまり場に馴染めなくて一人でチビチビご飯食べてたので、おひとり仲間ってことで長谷川くんに声をかけようかなと思ったんです。
だけど彼、こう話しかけにくいオーラがあって。
周囲に興味がないって雰囲気がよく伝わってきてました。だからこっちから話しかけたとしても、無視されるか、適当にあしらわれるかの二択しかなかったのでやめました。
あ、あと、ずっと花屋さんのことを見てたんですよ。
分析目的っていうよりも好意があったんじゃないかなって思うんですけど、本人に確認しないとわからないところですよね。ただ、花屋さんを見る目が、なんかちょっとこう、気持ち悪かったなとは感じました。友好的じゃないんですよ。気になってるような目をしておきながら、急に軽蔑したような目もしたりして。この人、ころころ印象が変わるなとは思ってました。
こっちのことなんて眼中になかったでしょうね。覚えていたら、それなりの反応をすると思うんですけど、全く。そもそも、今日の長谷川くんって一度でもこっちのことを見たのかな。ずっと花屋さんに意識があったみたいで。まあ華があればそっちを見て当然ですよ。雑草に興味を抱く人なんていません。それと、鬼塚くんのことをやたら敵対視してましたね。
多分、二次の集団面接で一緒に飲み会に行ったってことが自慢に聞こえたんじゃないですか。実際それはあったと思いますけど。こっちはひやひやでした。鬼塚くんが突っかかる度に、長谷川くんの本性が出てくるんじゃないかって。
あの人、切れたらもうどうにもならなかったと思います。軽く、人が一人死んでてもおかしくなかったのかなと。
開き直りはよくなかったですよね。悪いと思ってないんだろうなってことだけは伝わってました。ただ、そういう意識のまま花屋さんに近づいてたと思うと怖いです。だって、罪の意識がないですから。
長谷川くん、花屋さんの個人情報をかなり入手していたようです。お金で買ったりもしてたみたいですから、よっぽど花屋さんのこと好きだったんだろうなと。
ただ、表には一切出さなかったところを見る限りすごいなとは思いました。人って、頭の中で何考えてるか、わからないものですよね。そういう意味では、あの人の頭の中ってどうなってたんだろうってちょっと気になります。
あ、推薦の話ですよね。決まってます。あの人……名前は伏せたほうがいいですか。あれ、番号で発表する感じなんですか。ああ、だからそれぞれの名前の下に番号が振られていたんですね。どういう意味があるんだろうと気になってはいたんです。匿名他己紹介の順番にしては、私には当てはまらなかったので。
推薦したい方は五番の方です。どういう情報があったとしても、私は変わらなかったと思います。最初から気さくで、優しい方でしたから。こういう人が会社にいてくれたら、すごく安心するなと思ったんです。……すみません、あまり説得力がない内容で。
ただ推薦したい気持ちは強いですし、正直、私でなくていいと思っています。
内定者が一人で、それが自分以外だとしたらそれは結構きついところはあるんですが、ただ、あの人がいいです。
聖母のように包み込んでくれて、めった刺しにしていったあの人が──。