「どうして泣いてるの?」

「わたしの名前が男みたいだって……」

「気にすることないよ。あきら。格好いいじゃん。それに僕もほら、かおるって女の子みたいでしょ?」

「でも、みんな変だって……」

「だったらさ、僕はアイって呼ぶよ」

「アイ?」

「そう。おおのの『逢』は『あい』って読むんだって。大切な人にだけ使う言葉だって、姉さんが言ってた。だからアイ」

「アイ……いいかも」

「やった」

「じゃあこうさかは、コウくんだね」

「え、僕はそのままでいいよ」

「だめ! わたしはアイで、こうさかはコウくん。決まり!」

「なんか恥ずかしいな」

「約束だからね!」

「わかった。約束」

「アイって呼ばれたら、すぐにこうさかが呼んでるんだってわかるね」

「うん。だからまた辛いことがあったら僕を呼んでよ」

「助けてくれる?」

「どうだろう。そんなヒーローみたいな力はないかも」

「えー」

「でも、一緒に悩んではあげられる。一人より二人の方がいいでしょ?」

「そうかも」

「よかった」

「じゃあ、よろしく。コウくん」