特売、大正海老。
その文字を見つけ、特に何を作ろうと思ったわけでもないが、ふらりとカゴに入れてしまった。さてどうするか、と思えばすぐ近くに『今夜のおかず』などと一瞬誤解を招きそうな言い回しが書かれたチラシが置いてある。
「海老団子の餡かけかぁ。悪くないかも」
今夜のメニューは決まった。同じチラシに春雨サラダのレシピもあり、どうせならば豪勢な夕飯にしてやろうかと、書かれているものをカゴに追加していく。
「入れちゃったけど、春香これでいいかな」
スーパーに併設のドラッグストアに用があるから、と入り口で別れた。すぐに合流するだろうし、しばらく他の商品でも見ているか。
フルーツ売り場で、キウイを買うか、グレープフルーツを買うか迷っていると、すぐに春香がやってきた。
「買えた?」
「ん。欲しいのあった」
どうやらシャンプーらしい。
「なんでシャンプーとコンディショナーって、同じタイミングでなくならへんのやろ」
それは私も思う。違う商品にスイッチしたくても、同じタイミングでなくなってくれないと、変更しづらい。
はっ! もしやそれがメーカーの狙いか? スイッチさせないための……。いやまぁ、そんなことはないか。
「ねぇ、これ美味しそうじゃない?」
「ええねぇ。豪勢な夕飯になるやん」
同じことを考えてるじゃないか。
「酒も必要やな」
今日はビールよりチューハイかな、などと言いながらカロリーオフのものを選ぶ春香に、私も横から『いちご&ミルクハイ』といういちごミルクのような愛らしいパッケージのものを手に取った。
「それ、合うん?」
「……確かに」
今夜のメニューには合わないかもしれない。とりあえず美味しそうなのでこれはキープしつつ、もう一本。これで良い。春香も追加で二本ほどカゴに入れていた。
帰り道、土手際を歩いていると目に入るものが。
「春香、ハサミかカッター持ってる?」
「なんで持っとると思うんや」
言いながら出してきているじゃないの。
「今日、打ち合わせのあとに合流したから、持ってそうだなって思ってね」
ハサミを受け取りながら、土手にあがる。
「灯?」
「今日、何の日か知ってる?」
目の前に生い茂り、風に揺れる草に手を伸ばしながらそう問えば、春香は笑う。
「十五夜やね」
十五夜に海老が正解かといわれたら、どうだろうと答えるけれど、団子にするのだから良いだろう。甘さはないけれど、そこはまぁ許されたい。
顔がうずもれるほどのふわふわのススキを手に帰宅したら、猫達が大興奮だった。ボロボロにされたら困るので、洗面所に一度避難しておく。
「あれ。そういえば、ススキって水に入れるべきかな。入れなくても良いのかな」
いかにも切り花です、という顔をしているわけでもないので、不要な気もする。どうだろう。
こんなときには、そう──
「オッケーグーグル」
すぐにグーグル先生が教えてくれた。ありがたい。
ススキの根本を切って、その根本を酢に一分漬ける。その後水の入った花瓶に入れればOKで、くっついてる葉っぱはとったほうがいいらしい。正直なことを言うと、存外面倒だ。とはいえ、せっかく調べたので、グーグル先生の言うとおりに、茎に沿っている葉をとりはずし、処理をした。水に入れて暫く経つと、心なしかシャッキリとしたような気がする。
「殻剥き始めとる」
キッチンに行くと、すでに海老の腹を3回に分けて、きれいにぺろりんと剥がされた殻がまとめられていた。
「んじゃこれ炒めるね」
海老の殻は炒った後に出汁をとる予定だ。
その間に、春香が背わたを取る。
「この背わたがするんと取れると、気持ちええのよ」
「取れないと、ちょっと悔しい」
「それもわかる。あ、見てや。これちょっと長い!」
するりときれいに抜けた背わたを見せてくる春香に、とったおもちゃの獲物を見せに来るリリを思い出してしまう。猫みたいだ。
「剥いたら塩水と片栗粉で洗う、っと」
私がひたすら海老の殻を炒めている間に、春香は小さじ一杯を海老を入れたボウルにふりかけ、粘りが出るまで揉み込む。片栗粉、水をさらに加えて揉み込んでいくと、汚れが浮いてきた。
「手がかかるけど、きれいにとれるんだねぇ」
「ほんまに。こっちの手の方をどうにかしたいわ」
手にべっとりと付いた片栗粉を見せる。これ、きれいに落ちないんだよねぇ。わかるわぁ。
とりあえず、海老を優先して洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
「……すり鉢で擦るってあるんやけど、面倒やし、フープロでええかな」
正月に伊達巻を作る時に使ったことを思い出す。あれは本当に面倒だった。
「うん。フードプロセッサー使おうよ」
プラスチックの器に海老を入れる。あっという間に細かくなった。楽で良いよね、本当。文明の利器は積極的に使わないと。
「それをボウルに移して調味料。粘りが出るまで混ぜる?」
「なんで疑問系なのよ」
店で貰ったレシピを見ながら、小首を傾げている。
「いや……粘りなんて出るんやろうか」
春香の手がボウルの中に入る。しばらく捏ねていると、確かに粘りが出てきた。食材というのは不思議なものだ。
「ほんで次は? 今手がこんなやから」
べとべとの手で、指を開いてみせる。指と指の間に、ねっとりとした糸が伸びる。
「ホラー映画じゃん」
「ホラーは家庭から始めると怖いやんな」
ふくふくと笑い合いながら、次のステップを確認した。
「叩いて空気を抜いたらお団子状にまるめるみたい。あ、このあと揚げから、油用意するね」
揚げ油のその後の処理を考えて、小さめの鍋に少量の油を入れる。その間に春香は、まるでハンバーグを作るときのように、捏ねては叩いて空気を抜いていた。
「あ」
「あ?」
「そうか。ハンバーグやって捏ねると粘るもんね」
「今その話なん。でもまぁ灯の言うとおりやね。字面だけで見ると、そういうのと結びつかない」
うん、と頷きながら、油の様子を見る。
「さっきの空気を抜く前までで蒸したら、かまぼこになるんだって!」
「へぇ。それはそれで今度試してみたいわ。面白そうやない?」
だんだんと実験のようになってきたけれど、今年の年末にやってみるのも悪くない。
菜箸を油に入れれば、細かい泡がぷくぷくと絶え間なくでてくる。
「そろそろかな」
揚げる担当になり、春香には隣で甘酢ソースを作ってもらう。揚げた後はこのソースに絡めるらしい。
「ひと煮立ち、と。とろみがでたから、あとはここにその団子いれればええよ」
「オーケー」
揚げた団子をぽいぽいと春香の手元の鍋に移していく。全て移し終えたら、春香にバトンタッチ。
次は春雨サラダだ。ポットでお湯を沸かし、春雨を入れたボウルへ。熱湯につけて柔らかくなった春雨を切っていく。柔らかくしている間に調味液を作り、キュウリをななめの千切りにする。
キュウリと焼豚、レタスを千切りにして春雨と共にボウルへ。そこへ調味液を混ぜて完成だ。なかなか良いのではないだろうか。
「春香の方はどう」
「満点! お皿出せる?」
「ウイ」
「なんでフランス人」
「料理ぽいから」
「雑でええな」
炬燵テーブルを窓側に移動する。その上にススキを置き、窓を開けた。網戸はきちんと閉めてある。
テーブルに料理を並べて、キンキンに冷えているチューハイを出した。
カシン、と缶をぶつけて乾杯をする。
「ハッピームーンビューイング」
「なんでハロウィンみたいに言うん」
「ちょうど良いかな、って」
「何がちょうどええかわからんけど、まぁ月がきれいやからハッピーや」
窓の外には、東側の空にきれいな月が見える。
「ええ月やなぁ」
しみじみと月を見上げ──ながら海老団子を口に運ぶ。私もすぐに後を追った。
「っ、んーっ! 美味しい!」
「ええ団子やなぁ」
月と団子はやはり同列か。
「花より団子?」
「月も団子も、や」
ひょいぱくと春香が口に運べば、私もひょいぱくと口に運ぶ。そうして、あっという間に食べ終わってしまった。
春雨サラダは、酒の肴だ。
「アイラブユーを、月が綺麗ですねと訳したんやったら」
「漱石?」
突然の鉄板ネタがやってきた。
「そ。最近またSNSで話題になっとったから。だいたい年イチ、この時期に話題になるんよ」
チューハイを一口飲みながら、春香は暫し月を見て考える。
「灯なら、月が綺麗ですね、をどういう意味に受け取る?」
「愛してます、ではなくて、ってことよね」
「ん」
私もチューハイを飲む。『いちご&ミルクハイ』は思ったより甘くなかった。そう。月はどこから見ても綺麗だけれど。
「同じところから見る空も、悪くない。──かな?」
「ふ。それは、なかなかええな」
にゃぁ、と近寄ってきたミヤを抱えて空を見上げると、少し雲がかかってきた。
「月に叢雲」
「花に風、やっけ」
「そ。なーんか、私たち世代の人生みたい」
「やったら、このあとが叢雲からも風からも逃れるターンかもしれんやろう」
ごろりと後ろに倒れ込む。クッションが腰に当たり、頭が下がる。見上げると、春香の笑っている顔が見えた。
ぬ、とリリが私の鼻先を舐める。ざらりとした感触が気持ち良い。
「そだね。こんなに綺麗な月を見れたし、良いことがやってくるね」
リリの首元を撫でると、幸せそうな声を出す。
「ええことばっかりや」
「うん」
少なくとも、今日も明日も、猫がかわいい。
その文字を見つけ、特に何を作ろうと思ったわけでもないが、ふらりとカゴに入れてしまった。さてどうするか、と思えばすぐ近くに『今夜のおかず』などと一瞬誤解を招きそうな言い回しが書かれたチラシが置いてある。
「海老団子の餡かけかぁ。悪くないかも」
今夜のメニューは決まった。同じチラシに春雨サラダのレシピもあり、どうせならば豪勢な夕飯にしてやろうかと、書かれているものをカゴに追加していく。
「入れちゃったけど、春香これでいいかな」
スーパーに併設のドラッグストアに用があるから、と入り口で別れた。すぐに合流するだろうし、しばらく他の商品でも見ているか。
フルーツ売り場で、キウイを買うか、グレープフルーツを買うか迷っていると、すぐに春香がやってきた。
「買えた?」
「ん。欲しいのあった」
どうやらシャンプーらしい。
「なんでシャンプーとコンディショナーって、同じタイミングでなくならへんのやろ」
それは私も思う。違う商品にスイッチしたくても、同じタイミングでなくなってくれないと、変更しづらい。
はっ! もしやそれがメーカーの狙いか? スイッチさせないための……。いやまぁ、そんなことはないか。
「ねぇ、これ美味しそうじゃない?」
「ええねぇ。豪勢な夕飯になるやん」
同じことを考えてるじゃないか。
「酒も必要やな」
今日はビールよりチューハイかな、などと言いながらカロリーオフのものを選ぶ春香に、私も横から『いちご&ミルクハイ』といういちごミルクのような愛らしいパッケージのものを手に取った。
「それ、合うん?」
「……確かに」
今夜のメニューには合わないかもしれない。とりあえず美味しそうなのでこれはキープしつつ、もう一本。これで良い。春香も追加で二本ほどカゴに入れていた。
帰り道、土手際を歩いていると目に入るものが。
「春香、ハサミかカッター持ってる?」
「なんで持っとると思うんや」
言いながら出してきているじゃないの。
「今日、打ち合わせのあとに合流したから、持ってそうだなって思ってね」
ハサミを受け取りながら、土手にあがる。
「灯?」
「今日、何の日か知ってる?」
目の前に生い茂り、風に揺れる草に手を伸ばしながらそう問えば、春香は笑う。
「十五夜やね」
十五夜に海老が正解かといわれたら、どうだろうと答えるけれど、団子にするのだから良いだろう。甘さはないけれど、そこはまぁ許されたい。
顔がうずもれるほどのふわふわのススキを手に帰宅したら、猫達が大興奮だった。ボロボロにされたら困るので、洗面所に一度避難しておく。
「あれ。そういえば、ススキって水に入れるべきかな。入れなくても良いのかな」
いかにも切り花です、という顔をしているわけでもないので、不要な気もする。どうだろう。
こんなときには、そう──
「オッケーグーグル」
すぐにグーグル先生が教えてくれた。ありがたい。
ススキの根本を切って、その根本を酢に一分漬ける。その後水の入った花瓶に入れればOKで、くっついてる葉っぱはとったほうがいいらしい。正直なことを言うと、存外面倒だ。とはいえ、せっかく調べたので、グーグル先生の言うとおりに、茎に沿っている葉をとりはずし、処理をした。水に入れて暫く経つと、心なしかシャッキリとしたような気がする。
「殻剥き始めとる」
キッチンに行くと、すでに海老の腹を3回に分けて、きれいにぺろりんと剥がされた殻がまとめられていた。
「んじゃこれ炒めるね」
海老の殻は炒った後に出汁をとる予定だ。
その間に、春香が背わたを取る。
「この背わたがするんと取れると、気持ちええのよ」
「取れないと、ちょっと悔しい」
「それもわかる。あ、見てや。これちょっと長い!」
するりときれいに抜けた背わたを見せてくる春香に、とったおもちゃの獲物を見せに来るリリを思い出してしまう。猫みたいだ。
「剥いたら塩水と片栗粉で洗う、っと」
私がひたすら海老の殻を炒めている間に、春香は小さじ一杯を海老を入れたボウルにふりかけ、粘りが出るまで揉み込む。片栗粉、水をさらに加えて揉み込んでいくと、汚れが浮いてきた。
「手がかかるけど、きれいにとれるんだねぇ」
「ほんまに。こっちの手の方をどうにかしたいわ」
手にべっとりと付いた片栗粉を見せる。これ、きれいに落ちないんだよねぇ。わかるわぁ。
とりあえず、海老を優先して洗い流し、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
「……すり鉢で擦るってあるんやけど、面倒やし、フープロでええかな」
正月に伊達巻を作る時に使ったことを思い出す。あれは本当に面倒だった。
「うん。フードプロセッサー使おうよ」
プラスチックの器に海老を入れる。あっという間に細かくなった。楽で良いよね、本当。文明の利器は積極的に使わないと。
「それをボウルに移して調味料。粘りが出るまで混ぜる?」
「なんで疑問系なのよ」
店で貰ったレシピを見ながら、小首を傾げている。
「いや……粘りなんて出るんやろうか」
春香の手がボウルの中に入る。しばらく捏ねていると、確かに粘りが出てきた。食材というのは不思議なものだ。
「ほんで次は? 今手がこんなやから」
べとべとの手で、指を開いてみせる。指と指の間に、ねっとりとした糸が伸びる。
「ホラー映画じゃん」
「ホラーは家庭から始めると怖いやんな」
ふくふくと笑い合いながら、次のステップを確認した。
「叩いて空気を抜いたらお団子状にまるめるみたい。あ、このあと揚げから、油用意するね」
揚げ油のその後の処理を考えて、小さめの鍋に少量の油を入れる。その間に春香は、まるでハンバーグを作るときのように、捏ねては叩いて空気を抜いていた。
「あ」
「あ?」
「そうか。ハンバーグやって捏ねると粘るもんね」
「今その話なん。でもまぁ灯の言うとおりやね。字面だけで見ると、そういうのと結びつかない」
うん、と頷きながら、油の様子を見る。
「さっきの空気を抜く前までで蒸したら、かまぼこになるんだって!」
「へぇ。それはそれで今度試してみたいわ。面白そうやない?」
だんだんと実験のようになってきたけれど、今年の年末にやってみるのも悪くない。
菜箸を油に入れれば、細かい泡がぷくぷくと絶え間なくでてくる。
「そろそろかな」
揚げる担当になり、春香には隣で甘酢ソースを作ってもらう。揚げた後はこのソースに絡めるらしい。
「ひと煮立ち、と。とろみがでたから、あとはここにその団子いれればええよ」
「オーケー」
揚げた団子をぽいぽいと春香の手元の鍋に移していく。全て移し終えたら、春香にバトンタッチ。
次は春雨サラダだ。ポットでお湯を沸かし、春雨を入れたボウルへ。熱湯につけて柔らかくなった春雨を切っていく。柔らかくしている間に調味液を作り、キュウリをななめの千切りにする。
キュウリと焼豚、レタスを千切りにして春雨と共にボウルへ。そこへ調味液を混ぜて完成だ。なかなか良いのではないだろうか。
「春香の方はどう」
「満点! お皿出せる?」
「ウイ」
「なんでフランス人」
「料理ぽいから」
「雑でええな」
炬燵テーブルを窓側に移動する。その上にススキを置き、窓を開けた。網戸はきちんと閉めてある。
テーブルに料理を並べて、キンキンに冷えているチューハイを出した。
カシン、と缶をぶつけて乾杯をする。
「ハッピームーンビューイング」
「なんでハロウィンみたいに言うん」
「ちょうど良いかな、って」
「何がちょうどええかわからんけど、まぁ月がきれいやからハッピーや」
窓の外には、東側の空にきれいな月が見える。
「ええ月やなぁ」
しみじみと月を見上げ──ながら海老団子を口に運ぶ。私もすぐに後を追った。
「っ、んーっ! 美味しい!」
「ええ団子やなぁ」
月と団子はやはり同列か。
「花より団子?」
「月も団子も、や」
ひょいぱくと春香が口に運べば、私もひょいぱくと口に運ぶ。そうして、あっという間に食べ終わってしまった。
春雨サラダは、酒の肴だ。
「アイラブユーを、月が綺麗ですねと訳したんやったら」
「漱石?」
突然の鉄板ネタがやってきた。
「そ。最近またSNSで話題になっとったから。だいたい年イチ、この時期に話題になるんよ」
チューハイを一口飲みながら、春香は暫し月を見て考える。
「灯なら、月が綺麗ですね、をどういう意味に受け取る?」
「愛してます、ではなくて、ってことよね」
「ん」
私もチューハイを飲む。『いちご&ミルクハイ』は思ったより甘くなかった。そう。月はどこから見ても綺麗だけれど。
「同じところから見る空も、悪くない。──かな?」
「ふ。それは、なかなかええな」
にゃぁ、と近寄ってきたミヤを抱えて空を見上げると、少し雲がかかってきた。
「月に叢雲」
「花に風、やっけ」
「そ。なーんか、私たち世代の人生みたい」
「やったら、このあとが叢雲からも風からも逃れるターンかもしれんやろう」
ごろりと後ろに倒れ込む。クッションが腰に当たり、頭が下がる。見上げると、春香の笑っている顔が見えた。
ぬ、とリリが私の鼻先を舐める。ざらりとした感触が気持ち良い。
「そだね。こんなに綺麗な月を見れたし、良いことがやってくるね」
リリの首元を撫でると、幸せそうな声を出す。
「ええことばっかりや」
「うん」
少なくとも、今日も明日も、猫がかわいい。