昼休み、横山奏に不満をぶつけた。
「マジでふざけてるよな。あいつ、断れなくてふわふわ流されてる」
教室のざわついた空気の中で、生徒たちの出入りする音が響いている。
奏はパンをかじりながらスマホに目を落としている。
短髪にくりっとした目、筋肉質な体つきが目立つが、興味はほとんど画面に向かっているようだ。
俺の愚痴に適当に相槌を返してくる。
「焦るんなら、早くやっちまえよ。彼女いるのに、いつまで童貞なんだよ」
「そりゃ……やりたいけど」
「お前がヘタレだからだろ。そんなだから、他の男に取られるんだよ」
辛辣なことを平気で言うやつだが、妙に話しやすい。
俺と奏は、中学サッカー部の頃からの付き合いで、クラスでも目立つ存在だ。
もし、父さんの仕事に関わっていなければ、高校でもサッカー部を続けていただろう。
「あいつ、優しすぎるんだよな……」
「ふーん」
気だるそうに流していた奏が、突然顔を上げた。
「そういえば、一年の気になる子誘おうとしたら、彩絢ちゃんに『この子、わたしと付き合ってるから無理です』ってガチで断られたんだけど、本気か?」
「彩絢が……?」
少し考えてから、「知らねえよ」とだけ返した。
「はあ? まだ兄妹喧嘩してんの? 本当に女子カップルならあきらめるけど、嘘なら俺は本気だからな」
「知らねえし、お前浮気じゃね?」
「セリナとは別れた。今度は真剣だっつーの」
妹の名前が出てきて驚いたが、俺は正直、彩絢が嫌いだ。
母さんと一緒に、俺をイライラさせる存在だ。
父さんがこんなに頑張ってるのに、母さんはまったく興味を示さないし、支えようともしない。
すべて任せているようで聞こえはいいが、少しは手伝えよって話だ。
せめて事務仕事くらい、やれないのか?
父さんは母さんに認められたくて、必死に会社を大きくしようとしている。
俺は、奈緒さんを見習ってほしいと思っている。
スマホを開くと、栞からラインが届いていた。
『ホスピス行くの、琴音ちゃんと一華ちゃんも一緒だけどいい?』
「どうでもいい」とすぐに返した。
「マジでふざけてるよな。あいつ、断れなくてふわふわ流されてる」
教室のざわついた空気の中で、生徒たちの出入りする音が響いている。
奏はパンをかじりながらスマホに目を落としている。
短髪にくりっとした目、筋肉質な体つきが目立つが、興味はほとんど画面に向かっているようだ。
俺の愚痴に適当に相槌を返してくる。
「焦るんなら、早くやっちまえよ。彼女いるのに、いつまで童貞なんだよ」
「そりゃ……やりたいけど」
「お前がヘタレだからだろ。そんなだから、他の男に取られるんだよ」
辛辣なことを平気で言うやつだが、妙に話しやすい。
俺と奏は、中学サッカー部の頃からの付き合いで、クラスでも目立つ存在だ。
もし、父さんの仕事に関わっていなければ、高校でもサッカー部を続けていただろう。
「あいつ、優しすぎるんだよな……」
「ふーん」
気だるそうに流していた奏が、突然顔を上げた。
「そういえば、一年の気になる子誘おうとしたら、彩絢ちゃんに『この子、わたしと付き合ってるから無理です』ってガチで断られたんだけど、本気か?」
「彩絢が……?」
少し考えてから、「知らねえよ」とだけ返した。
「はあ? まだ兄妹喧嘩してんの? 本当に女子カップルならあきらめるけど、嘘なら俺は本気だからな」
「知らねえし、お前浮気じゃね?」
「セリナとは別れた。今度は真剣だっつーの」
妹の名前が出てきて驚いたが、俺は正直、彩絢が嫌いだ。
母さんと一緒に、俺をイライラさせる存在だ。
父さんがこんなに頑張ってるのに、母さんはまったく興味を示さないし、支えようともしない。
すべて任せているようで聞こえはいいが、少しは手伝えよって話だ。
せめて事務仕事くらい、やれないのか?
父さんは母さんに認められたくて、必死に会社を大きくしようとしている。
俺は、奈緒さんを見習ってほしいと思っている。
スマホを開くと、栞からラインが届いていた。
『ホスピス行くの、琴音ちゃんと一華ちゃんも一緒だけどいい?』
「どうでもいい」とすぐに返した。