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卒業式の日。三月なのに、山が白く染まっていて寒い。
みんな泣いたり笑ったりして、賑やかだったけど、わたしはただ見ていた。冷たい空気に包まれて、心は動かなかった。
体育館の裏で、英斗に「好きでした。付き合ってください」って言った。
断られたらどうしよう、と思うと胸がドクドクして、顔が熱くなる。
手が少し震えているのもわかる。好きでもないのに、こんな気持ちになるのが変な感じだ。
でも、英斗はあっけなく引っかかった。
「マジで!? よっしゃー!」って、子どもみたいに騒ぎながら飛び跳ねたかと思ったら、しゃがみ込んだ。
そんな英斗を見下ろしながら、周りを見る。
体育館裏のコンクリートにはまだ雪が残っていて、冷たい空気が足元を刺す。
融けかけた雪でぐしゃぐしゃになった地面。木の枝が風に揺れて、かさかさと音が耳に残るだけ。
何気ない景色を見ながら、「これが現実なんだ」と実感した。
少しだけほっとする。これでママに怒られない。
「お前、本当にかわいいなぁ」
英斗は落ち着かない様子で、わたしに夢中だ。
「ははっ、お前も俺のこと好きだったんだな」
わたしが目をそらしたのを見て、英斗はますます調子に乗る。
本当は、お前なんか好きじゃないのに、そう言えないのが悔しい。 「……えへへ」って、笑ってごまかすしかなかった。
本当にどうすればいいんだろう。好きでもない相手にこんなことをして……。
英斗は付き合った実感がわいてきたのか、じろじろと顔や体を見つめてくる。
嫌だ、もう無理。気持ち悪い。逃げたい。でも、逃げられない。
これからどうする? 付き合ってるふりをするの? 恋愛番組みたいに? うまくいくわけがない。
それに、ただ付き合うだけじゃ、目的は果たせない。
ママのために、英斗に頼まなきゃいけない。ママの仕事も、全部こいつに頼るしかない。
嫌だ。でも、仕方がない。
わたしにとって三人目の彼氏。こんなに嫌な気持ちで付き合うのは初めてだ。
心が、目の前の残雪みたいに冷たく感じる。
卒業式の日。三月なのに、山が白く染まっていて寒い。
みんな泣いたり笑ったりして、賑やかだったけど、わたしはただ見ていた。冷たい空気に包まれて、心は動かなかった。
体育館の裏で、英斗に「好きでした。付き合ってください」って言った。
断られたらどうしよう、と思うと胸がドクドクして、顔が熱くなる。
手が少し震えているのもわかる。好きでもないのに、こんな気持ちになるのが変な感じだ。
でも、英斗はあっけなく引っかかった。
「マジで!? よっしゃー!」って、子どもみたいに騒ぎながら飛び跳ねたかと思ったら、しゃがみ込んだ。
そんな英斗を見下ろしながら、周りを見る。
体育館裏のコンクリートにはまだ雪が残っていて、冷たい空気が足元を刺す。
融けかけた雪でぐしゃぐしゃになった地面。木の枝が風に揺れて、かさかさと音が耳に残るだけ。
何気ない景色を見ながら、「これが現実なんだ」と実感した。
少しだけほっとする。これでママに怒られない。
「お前、本当にかわいいなぁ」
英斗は落ち着かない様子で、わたしに夢中だ。
「ははっ、お前も俺のこと好きだったんだな」
わたしが目をそらしたのを見て、英斗はますます調子に乗る。
本当は、お前なんか好きじゃないのに、そう言えないのが悔しい。 「……えへへ」って、笑ってごまかすしかなかった。
本当にどうすればいいんだろう。好きでもない相手にこんなことをして……。
英斗は付き合った実感がわいてきたのか、じろじろと顔や体を見つめてくる。
嫌だ、もう無理。気持ち悪い。逃げたい。でも、逃げられない。
これからどうする? 付き合ってるふりをするの? 恋愛番組みたいに? うまくいくわけがない。
それに、ただ付き合うだけじゃ、目的は果たせない。
ママのために、英斗に頼まなきゃいけない。ママの仕事も、全部こいつに頼るしかない。
嫌だ。でも、仕方がない。
わたしにとって三人目の彼氏。こんなに嫌な気持ちで付き合うのは初めてだ。
心が、目の前の残雪みたいに冷たく感じる。