その夜、ベッドの中で『オデッサのロシア人』が発したメッセージを思い出していた。
 現地情報ならではのインパクトがあったし、添えられた一つ一つの写真の衝撃は半端なかった。
 それだけでなく、締めくくりの壮絶な吐露に胸を打たれた。
 プーチンと同じロシア人であることに苦しんでいるという心情が痛いほど伝わってきた。
 正に魂の叫びだった。
 だからこそ支持が広がっているのだ。
 
 それに対して私は……、
 表面的なことしかできていないと認めざるを得なかった。
 国連大使でもなく、日本政府の要人でもない自分にできることは限られているが、それでも個人として精一杯やっているという自負はあった。
 しかしそれが『命を懸けて』というレベルか? と問われればそうではなかった。
 安保理事会の機能不全をなんとかしなければと訴え、事務総長や日本大使への叱咤激励を口にはしていたが、自らが能動的な行動を起こしているわけではなかった。
 といって、ロシア人でもなくウクライナ人でもない自分が当事者のような振る舞いをすることもできなかった。
 それは演技でしかないからだ。
 心から出たものではない。
 
 といってこのままでは……、
 呟いてはみたが、それから先が続かなかった。
 目を瞑って睡魔を待つしかなかった。