波瀬先輩の言葉に思わず目を泳がせてしまう。

僕は…、“平等”って言葉が嫌いだから。

恋愛対象が同性ってだけで奇異な目で見られ、「大変だな」と同情されたり、さらには気持ち悪がられたりする。

恋愛観が異性と同性、そこだけでもう世間の目は平等ではなくなる。

「今日は学校は休みだから、ゆっくり話そうか。座って」

部屋の壁側の両サイドに置かれたそれぞれのベッドに腰かけて向かい合う。

「まず、相手が誰であっても人と人が出会うっていうこと自体がそもそも特別なことでさ。
世界総人口80億人の中で、学校とか職場でたった一人の相手と出会うっていうのは、ものすごい確率なんだよね。

その中でも友達になったり、恋人関係になったり、名前のある親しい関係になるのは更に確率の低いこと。
だって友情とか恋愛って、少なくともお互いに好意がないと成立しないわけだから。

この広い世界で、好意を持てて、持たれてっていうのは“奇跡”って言えると思うんだ。
それはどんな人でも、俺やイチくん、みんなに言えること。

誰でも平等に、一期一会は奇跡。
平等は当たり前ってこと、つまり世間でいう“普通”ってことになる。
…だから誰かに恋をして、されてっていうのは“平等の奇跡”なんだ」