「俺は自分の恋愛対象が男だってことを恥にも思ってないし、隠すようなことでもないと思ってる。昔なじみのやつらは知ってるしね。でも、わざわざ不特定多数にオープンにする必要もないとも思うから言ってないだけで、好きだなって思った相手には告白もしたいと思ってるよ」
「告白…」
自分には一生縁のないものだと思っていた言葉。
好きになっても、そのことを相手に伝えるようなことはしない、出来ない。
自分が同性愛者だと自覚した瞬間から、僕は元々の性格も相まって臆病になってしまった。
「誰かが誰かを好きになるのは普通のことでしょう?」
「た、確かにそうかもしれないけど。まだまだ偏見を持ってる人はたくさんいて、陰でコソコソ言われるのは、僕は…、耐えられない」
またいつものように視線を下げてしまう。
「俺もそう思ってた時期があったよ。でも、でもね…」
いつもはそんなことしないのに、先輩は俺の顔を上げさせて、視線を半ば無理やり合わせる。
「恋っていうのは〝平等の奇跡〟だと思うんだ」