「ふふっ、初めて目を合わせてくれたね、イチくん。…俺もね、ずっと恋愛対象は男だったの」
「…そんなこと、あるわけ」
「どうして否定しようとするの」
少しムッとなった顔が、こんな時なのに可愛いと思ってしまった。
「だってっ、先輩と付き合ってるって噂になってる女子はいっぱい居たし、実際先輩と仲がよさそうな2ショットの写真を持ってる子だって…」
「噂はあくまで噂に過ぎないし、写真はどうしても記念に欲しいって言われたから撮っただけだよ。それ以上の仲はない」
「で、でも…っ」
「ねぇ、それ以上否定するんだったら、さすがにイチくんが相手でも怒るよ?」
笑っているが、目が笑っていない。
「す、すみません」
美形だからか、怒りの一歩手前でも迫力がある。
謝ると、いつもの穏やかな顔に戻った。