気持ち悪いと言われるのがオチなのに、嫌われさえすれば肩を組まれた時の先輩の匂いとか、声だとかにドキドキしなくて済むと心の底から安堵している自分がいる。

でも同時に、もう先輩と話すことさえなくなってしまうかもしれないという不安、憂慮。


自覚したくなかった、自覚しないようにしていた。

自分自身でさえも分からないように覆い隠していた、認めたくなかった恋心。

「イチくんは同性愛者…、だよね?」

「なん、で」

声が震えて、手足の感覚がない。

自分がちゃんと立てているか、分からなくなる。

「う~ん、俺もそうだから、かな」

「は?俺も、って?」

そこで初めて先輩の目を真っ直ぐ見る。

それに気づいた先輩があまりにも嬉しそうに目元を緩ませるから。

もしかしたら、なんて錯覚してしまいそうになる。