でもすぐに動きを再開させて、静かな声で話し始める。
「イチくんさぁ、前から思ってたけど、何をそんなに卑屈になってるの?」
「ひ、くつ…?僕が?」
「あぁ、やっぱり無自覚だったんだ」
本棚にすべてしまい終えた先輩は立ち上がって、真正面から僕を見る。
僕はいつも通り、先輩の口元や喉に視線を下げたまま対峙する。
すると、ゆっくりと口角を上げた先輩が優し気に、けれど僕にとっては残酷な宣告をする。
「イチくんって、俺のこと好きでしょ?恋愛的な意味で」
「っは…?な、何言ってんですか、そんなわけないでしょうっ」
必死に否定する様が、逆に肯定しているようで我ながら滑稽だと思った。
そんなはずはないのに、自分の奥底にあった気持ちを見透かされたような気分になるのは何故か。
混乱しているのに、冷静な部分で「あぁやっぱりバレていたんだ」と思ってしまっているのは何故か。
バレてよかったと、これで覆い隠す努力をしなくて済むとさえ思って安心してしまっているのは、何故だろうか。