しかし、それがこの波瀬先輩の人気を加速させている。
どんな相手にも分け隔てなく〝平等〟に接することが出来るのが先輩の良いところ。
そんな先輩が今、僕と同じ部屋で自分の荷物を片付けながら、平然と爆弾発言をする。
「ねぇ、イチくん。せっかく同部屋になったんだしさ、今日から一緒に登校しようね」
「それは無理です!」
間髪入れずに、自分でも思ったより大きな声が出て、先輩と共に驚いた顔をしてしまうが、すぐに気を取り直して「絶対無理です」と再度拒否する。
「どうして?どうせ同じ場所に行くのに」
「前から言っている通り、先輩といると目立つんですよ」
「周りの目なんてそんなに気にしなきゃいいのに」
「…そりゃ、先輩みたいに自分に自信が持てるに越したことないですけど」
つい皮肉気に言ってしまって、備え付けられた本棚に参考書などを入れる先輩の動きが一瞬止まった。