波瀬先輩のファンの目は厳しく、僕のように地味な人間が少しでも先輩と近づくだけで嫌味を言ってくる。

けれど何故か、波瀬先輩は僕を見かける度に声を掛けてきて、目立つからやめて欲しいと頼んでも懲りずに肩を組んだり、親し気に絡んでくる。

僕と先輩が一緒に居る時の女子の恨めしそうな顔といったら…。


確かに僕は先輩のように成績も運動神経も人当たりも良くなければ、決してカッコ良くもない。

一緒に居るのに相応しくないと言われるのも仕方のないことだ。

だが決して僕から近づいているわけではないと声を大にして言いたいのだが、そんな度胸は残念ながら僕にはない。

そう言えるくらいの度胸があるなら、僕はこれほどまで生きづらい思いをせずに済んだだろう。


僕は僕だと堂々とできれば…、と何度も考えるが実行に移すことは出来ずにいる。

「はぁ…、何も悪くないのになぁ」