僕は市ヶ谷 一成(いちがや いっせい)。
高校二年生で、一年の頃から寮生活をしている。
僕が寮生活を選んだのは親との折り合いが悪いのと、この高校の寮は入寮する人数が少ないと聞いたから。
実際、寮の部屋は二人用に作られているものの、相部屋になることはなく、一人で快適に過ごせている。
…はずだったが、どうしてか一個上の先輩と一緒の部屋で過ごすことになってしまった。
「ごめんなさいねぇ、老朽化と入寮する生徒が少ないってことで寮の縮小化をすることになって…」
「あぁ…、ソウナンデスカ…」
寮母さんは明らかに残念そうにする僕に申し訳なさそうに謝る。
決して寮母さんに罪はない。
だが、残念に思っているのも事実。
一人で過ごせなくなるのはもちろんのこと、相手が成績優秀、運動神経抜群、人当たりも良く、何より王子と呼ばれるほどの美しい見た目で校内ダントツ人気№1の波瀬 陵(はせ りょう)先輩とは…。
(僕は何も悪くないのに、また女子から睨まれるに決まってる)