一夜明けた朝。
 起床したばかりのセルシアは、昨日起きた怒涛の騒ぎを思い出した。

「昨日、アランから告白……されたのよね?」
「にゃー」
「夢じゃない……わよね?」
「にゃん」

 思い出すと顔が真っ赤になりそうなため、セルシアはいつの間にか布団に潜り込んでいた子猫をひょいっと持ち上げて顔を埋めることで誤魔化したが、心までは誤魔化せない。

「うぅぅ……」

 恥ずかしさで呻いたかと思うと、彼女はふと不安そうに部屋の中をウロウロとし始めた。

「…………そっ、そう言えば。アランったら、今日は目覚めのお茶を持って来てくれないのかしら……」
「みゅー」

 ぎゅっと子猫を抱いて、セルシアはちょっぴり不貞腐れたように呟いた。

「…………なにかしら。来てくれないと思ったら、なんだかこう……胸がぎゅっとして……。……会いたいわ……」
「にゃ?」
「はっ。で、でも顔を合わせたらどんな表情をしたらいいのかしらね? あ、あら? 私いままで、アランにどんな顔で接していたの?」

 どうしましょう、どうしましょう、とひたすら狼狽えるセルシアは猫に恋愛相談をするが、返ってくる答えは鳴き声だけ。
 乙女の悩みに悶えるセルシアを、影からメイドがくしゃみを堪えて微笑ましそうに見守っているが……あくまでも見守っているだけである。

 アランの告白は叶ったが、突然のことでセルシアの恋心はまだまだ追いついていない。

「ううう、アランに会ったらどうすれば良いのかしら??」
「にゃー」

 ふたりの仲の進展は、なかなかに前途多難である。

 後に魔王と和平を結ぶきっかけを作ったことで伝説の執事と呼ばれるアランと、公爵令嬢セルシアの恋の駆け引きは……これからだ!

~完~