小学校からの親友と私の家で遊んでいた。

「はぁ……」

(さくら)、どしたー?」

緋奈(ひな)がテレビに繋いでいるゲーム画面から目を離さずにそう訊いた。

「もう駄目なんだ、私……」

「お、おお……なんか重大そう。ちょっと待って。ゲームやめてしっかり聞く」

緋奈がゲーム機を置いて、私の方に体を向けた。

「で、桜。どしたの?」

「私たちさ、高校入って一週間じゃん。で、高校は違うじゃん」

「え、うん。急に何!?」

「……緋奈さ、友達出来た?」

「一応出来たけど」

「うぁああああああ!!羨ましいすぎる!!!」

「桜のその反応的に出来てないな」

「そうだよ!なんで!?」

「分からんけど、桜良いやつやし大丈夫じゃない?」

「世界はそんなに簡単じゃないんだよ! 高校のボッチは辛いよ!?」

「それはそう」

「急に辛辣!緋奈の馬鹿ー!」

私の言葉を気にせずに緋奈が何かを考えている。

「緋奈ー、聞いてるー!?」

「聞いてる。考えてるの」

「何を?」

「友達ができる方法。うーん、なんかさ思うんだけど……友達出来なかったら、終わりって思うから余計プレッシャー感じるじゃん?」

「うん」

「だからさ、友達出来なかった時も大丈夫って思えることを今から言うから、後はプレッシャーなしで頑張ってきて」

「よく分からないけど、どういうこと?」

すると、緋奈がもう一度しっかりと私と目を合わせた。



「まず、桜が高校で友達が出来なかった場合、私が毎週のように一緒に遊ぶので寂しくないです。それを楽しみに平日頑張ること」



「緋奈、相変わらずやさしっ!」



「で、次に、一人は一人で悪くない。学生の本分は勉強!」



「はい!緋奈先生!」



「先生じゃないわ!……で、最後。一人でも死なないし、すでに友達がいないから、声をかける勇気が出しやすい!さらに嫌われる心配なし!」


緋奈はそう言い切った後に私のほっぺを両手でむにっとつまんだ。



「つまり、友達が出来なくても大丈夫だと思って、心に余裕を持って勇気出してこい!」



私は緋奈にほっぺをつままれたまま、「でも、怖いー!」と震えた声で叫んだ。



「頑張ろうとしただけで、私がめっちゃ褒めるから大丈夫! それとクラスの人に声をかける前に今から言う私の言葉を思い出すこと」



緋奈がニコッと笑った。







「桜、大好き!」







ああ、もうこれだけ最高な友達がいればもう何でもいいや、と思ってしまったから私は明日もきっと頑張れるのだと思う。

怖がりな私にいつも緋奈は勇気をくれる。



ねぇ、世界に沢山いる私と同じような怖がりさん。

人に嫌われるのが怖い人。

勇気を出すのが苦手な人。

きっと色んなことで頑張っているのだと思う。

だから、私も明日頑張るから貴方も頑張ってなんて言わない。


代わりに、明日も少しでも笑顔でいて欲しい。


その日が最悪の1日でも、次の日は良い日になるかもしれない。

それでも未来のことは誰にも分からないから。

「明日」も「これから」も笑えますようにと、今日も幸せを探すんだ。



fin.