「――ねぇ、クロル。今日観た映画、すっごく面白かったね! 私、まだ胸がドキドキしてるよ」
「最後の、主人公と女の子が再会するシーン、特によかったよね」
「そうなの! これからも二人は一緒に旅をするんだ、って思うと、続きをもっと観たくて、終わっちゃうのが寂しかった」
「続きかぁ……リリアがあの映画の続きを考えるとしたら、どんなお話にする?」
「え? そうだなぁ……あ、クロルが前に観たっていう、怪獣映画にしちゃう! とか?」
「それは……かなりの超展開だね」
「ちょうてんかい?」
「うん。でも、確かに……あの二人が協力して怪獣を倒す話は面白そうかも」
「でしょでしょ?」
「ひょっとしてリリア、映画監督の才能があるんじゃない?」
「そ……それを言うなら、クロルだって……」
「え、僕? なんで?」
「……なんでもない! ていうか私、監督なんて無理だよ。今日、テリー監督にいろいろ言われてやってみたけど……セリフを考えたり、みんなに指示したり、難しそうだったもん」
「そういえば、どうしてあんなにボロボロになってたの?」
「……女スナイパー役で、伝説の『黄金アジ』を巡って、少年と猫と追いかけっこしていたから」
「あはは。何それ、全然わかんない」
「自分から聞いたくせにひどい! そう言うクロルは、私とはぐれている間なにしていたの?」
「……実は僕も、ある監督の演出に巻き込まれちゃって……」
「えーっ? なになに? 聞きたい聞きたい!」
リリアの笑い声で揺れる列車を。
今宵も月が、優しく照らしました。