もうダメだと思ったそのとき。
「おい。それ俺のツレなんだわ」
聞き覚えのある声がして、咄嗟に私は振り向く。
声のほうを見ると月君が立っていた。
相手はふたりいるというのに動じる様子もなく、月君は鋭い目をして睨みつける。
すると「んだよ、男連れかよ」「つまんねえ、萎えたわ、帰ろっ」と、言って柄の悪い男性たちはいってしまった。
そのあと「お前なにやってんの?ちゃんと自分で断れよ」と、月君がめんどくさそうに呟く。
本当は助けてくれてありがとう。と感謝を言わなければならない。
しかし、不器用な私は正反対のことを言ってしまった。私はこんな自分が心底きらいだ。
「関係ないでしょ。私、あんたに言われたいやなこと忘れてないから。来ないでよ。私のこときらいなんでしょ。ほっといて」
「ふーん。あっそ、俺もお前きらいだから別にいいわ。偽善者とちがって感謝されたくて来たわけじゃねえし。もう祭りだるいから抜けて来ただけだし」
また偽善者と言われて、私は頭にかっと血が昇る。
「じゃあ見捨てれば良かったのになんで助けたの?私のこときらいなんでしょ?そっちが偽善者じゃん」と、半泣きで私は彼を睨みつけた。
すると「最近あることがきっかけで少し考え方が変わっただけ。どういうのが偽善者なのか、本当に強いってことなのか、わからんくなった」と、月君は小さく呟いた。
意味がわからない。やっぱり私はこいつがきらいだ。
そのあと、すぐに月君と別れて帰りの地下鉄に乗っていると星崎さんからDMが来た。
【今日は逸れちゃってごめんね。すぐに月君が気づいて、朝陽ちゃんのこと探しにいくって月君までそのままどこかいっちゃったの。合流できた?】
なんて返事をしていいかわからなくて、とりあえず【私も逸れちゃってごめんね】とだけ返信をしといた。
頭の中がぐちゃぐちゃでまとまらない。