数秒待ってから、渡り廊下へと出て行く。
私は偶然漣里くんと会った風を装って、驚いた顔をし、それから笑って手を振った。
反射的に、だろう。
漣里くんは口元に微笑を浮かべた。
そう、これこそ私の狙い!
漣里くんは笑顔で手を振ると、笑い返してくれる習性があるのだ!
私はすかさず携帯を構えて、写真を撮った。
よし、完璧!
胸元でぐっと手を握る。
写真の中の漣里くんは、ごく自然に笑っていた。
素晴らしい一枚を見つめて微笑んでから、ふと気になって尋ねる。
「漣里くんはお化け屋敷、手伝わなくていいの?」
「ああ。俺は設営班で、お化け役は別の奴がやるから」
漣里くんは文化祭が終わったらクラスの皆で打ち上げに行くそうだ。
もうすっかり溝が埋まったようで、私としては非常に嬉しい。
「じゃあ、色々見て回ろうよ。この服返して――」
「いや、まだ約束まで三十分以上あるし、ぎりぎりまでその格好でいて」
漣里くんは珍しくきっぱりとそう言って、手を差し出してきた。
「は、はい」
そう言われたら何も言えず、手を繋いで、歩き出す。
「あのさ、後夜祭のダンスパーティーのことだけど……」
葵先輩には任せてくれ、と頼もしく言われたものの、これまで漣里くんは一度もダンスパーティーのことを口にしていない。
どうしても気になるため、探りを入れてみる。
「ああ。踊る奴は大変だな。クラスの女子も、ドレスの準備がどうとか言ってた」
自分にはまるで関係のないことのような口ぶりに、私は戸惑った。
この反応は、葵先輩から話が通ってないとしか思えない。
私は期待に胸を膨らませながら、何日もかけて色んな店を巡った。
ドレスも買ったし、靴だって用意したんだけど……あれ?
もう一度葵先輩に聞いたほうがいいのかな?
考え、胸の中でかぶりを振る。
葵先輩は嘘はつかない人だ。
多分、漣里くんには直前まで伝えないつもりなんだろう。
どうやって漣里くんを着替えさせて、その気にさせるつもりなのかはわからないけど、これまで最高のサポートをしてくれた葵先輩を信じよう。
私は偶然漣里くんと会った風を装って、驚いた顔をし、それから笑って手を振った。
反射的に、だろう。
漣里くんは口元に微笑を浮かべた。
そう、これこそ私の狙い!
漣里くんは笑顔で手を振ると、笑い返してくれる習性があるのだ!
私はすかさず携帯を構えて、写真を撮った。
よし、完璧!
胸元でぐっと手を握る。
写真の中の漣里くんは、ごく自然に笑っていた。
素晴らしい一枚を見つめて微笑んでから、ふと気になって尋ねる。
「漣里くんはお化け屋敷、手伝わなくていいの?」
「ああ。俺は設営班で、お化け役は別の奴がやるから」
漣里くんは文化祭が終わったらクラスの皆で打ち上げに行くそうだ。
もうすっかり溝が埋まったようで、私としては非常に嬉しい。
「じゃあ、色々見て回ろうよ。この服返して――」
「いや、まだ約束まで三十分以上あるし、ぎりぎりまでその格好でいて」
漣里くんは珍しくきっぱりとそう言って、手を差し出してきた。
「は、はい」
そう言われたら何も言えず、手を繋いで、歩き出す。
「あのさ、後夜祭のダンスパーティーのことだけど……」
葵先輩には任せてくれ、と頼もしく言われたものの、これまで漣里くんは一度もダンスパーティーのことを口にしていない。
どうしても気になるため、探りを入れてみる。
「ああ。踊る奴は大変だな。クラスの女子も、ドレスの準備がどうとか言ってた」
自分にはまるで関係のないことのような口ぶりに、私は戸惑った。
この反応は、葵先輩から話が通ってないとしか思えない。
私は期待に胸を膨らませながら、何日もかけて色んな店を巡った。
ドレスも買ったし、靴だって用意したんだけど……あれ?
もう一度葵先輩に聞いたほうがいいのかな?
考え、胸の中でかぶりを振る。
葵先輩は嘘はつかない人だ。
多分、漣里くんには直前まで伝えないつもりなんだろう。
どうやって漣里くんを着替えさせて、その気にさせるつもりなのかはわからないけど、これまで最高のサポートをしてくれた葵先輩を信じよう。