「俺たちが真相を暴露したことで小金井も野田に反旗を翻し、金を払わなくなった。だから、俺が責任取って小金井に取り立てるか、もしくは代わりに金を払えって脅してきた」
「……なんて奴なの……」
 脳裏に野田たちの顔を思い描き、私は怒りに震えた。

「四月にあいつらを殴った後、しばらくは闇討ちとかを警戒してたんだ。野田はああいう性格だから、絶対報復しにくると思ってた。でもいままでなんともなかったのは、小金井が防いでくれてたんだよ。そんなこと、俺、全然知らなかった」
 小金井くんは小金井くんなりに、自分をかばってくれた漣里くんを守ろうとしてたのか……。

 でも、私が真相を暴露したいと言ったから、野田たちを口止めする意味もなくなった。
 約束が失われることで、もし野田が漣里くんへの報復を決めたとしても、彼には戦う力があるし、大丈夫だとたかをくくったのかもしれない。
 小金井くんだって、長いこと野田に搾取され続けるのは嫌だったはずだもの。

 私の働きかけが、いい加減に野田の呪縛から解放されたいと願う小金井くんの背中を押したんだ。
 小金井くんが教室でやたらと攻撃的で、人を見下すような発言を繰り返していたのも、真相を知ったいまなら、野田たちによる多大なストレスが原因だとも考えられる。

 ――君の短絡的行為によって、僕はいまでもあいつらにつきまとわれてるんだ。いい迷惑だよ、全く。

 屋上でのあの言葉も、半分は本音だったんだろう。

 恩人に感謝する気持ちと、漣里くんを庇うためにお金を支払い続けなければならないという状況の板挟みになって、苦しかったんだろうな……。

「その話を聞いて、俺は『お前らクズだな』って言った」
「……その言葉が野田たちに火をつけたんだね」
「ああ。こうなるとわかってて、わざと怒らせた。俺自身が暴力の証拠だ。一方的に殴られた現場を多くの生徒が目撃した以上、もう前みたいな『不良同士のただの喧嘩』じゃ済まされない。あいつらはこれから裁きを受けることになる」
「そうだね……」
 でも。
 それなら良かった、とはとても思えない。

「……なあ、真白。なんでこっち見ないの?」
 何故って、ガーゼに覆われた顔を直視するのが辛いから。
 どうしてもっと早く到着できなかったのかと、手のひらに爪を立て、自分を責め続けているから――。

 答えられずにいると、突然、漣里くんに手を掴まれた。