「人間は文字通り、人と人との間で自分を作るの。たくさんの人と結びついて、付き合っていくうちに、不思議と絶対に切れない縁もあるんだって気づくよ。知り合った人が最後には離れていくなんて決めつけてしまわないで。皆が皆、細い縁で結ばれてるなんて限らないよ? 中には決して切れない、一生ものの縁だってあると思う。私は、できればずっと、ずっと、漣里くんとこうして手を繋いで歩いていきたいな。せっかく漣里くんが紡いでくれた縁だもの」
「……俺が?」
「そうじゃない」
 私は苦笑して、漣里くんの手を握る手に力を込めた。

「熱中症になりかけてたあの日、漣里が私に声をかけてくれなかったら、こんなに仲良くなることなんてなかった。あのとき漣里くんが私に手を伸ばしてくれたから、縁を紡いでくれたから、私はいま、彼女として傍にいることができるの。漣里くんのクラスメイトも、いまはその……酷い状態かもしれないけど、それは漣里くんが壁を作ってるせいもあるんじゃないかな? 話しかけるなっていうオーラを作ってると、やっぱり近づきがたいし、よからぬ噂を聞いて、庇いたいって思ってくれる子がいたとしても、漣里くん本人を知らないんだから庇いようがないんだよ」
 漣里くんは押し黙っている。

 自分の中にも反省点があると思っているのかもしれない。

 等間隔に並んで立つ通りの外灯の下を、漣里くんと手を繋いで歩く。
 行きかう車のライトに照らされて、同じ制服を着た生徒、サラリーマン、OL風の女性、色んな人が歩いていた。

「私にしてくれたように、他の子にも手を伸ばして。一生ものの縁が見つかるまで、諦めずに紡いでみてほしい。独りは楽だけど、でも、寂しいよ」
 人間は独りで生きていけるほど強くない。

 漣里くんだってそうだ。
 独りには慣れてるなんて言ってたけど、そんなわけない。

 クラスの輪から弾き出されて、辛いと感じないわけがないんだ。
 漣里くんは温かい心の持ち主なんだから、歩み寄る姿勢を見せればきっと、友達ができるはずだよ。

 私にとってのみーこみたいに、一生ものの友達がすぐ傍にいる可能性を否定して、自分から遠ざけちゃうなんて、もったいないよ。

「私は漣里くんと誰かが仲良くしてる姿、見たいな。誰かと笑ってる漣里くんを見てみたい」
「……努力する」
 それまでじっと私の話に耳を傾けていた漣里くんが、私の手を強く握った。

「うん。私もこれから、友達や知り合いに真相を広めて、悪評が消えるように努力するから。そのうち皆もわかってくれるよ」
 そしたら漣里くんがクラスメイトと仲良く談笑する姿を見られたりするだろうか。

 だったらいいな、と、私は理想の未来を描き、心から笑った。