一週間が経った。
 二年二組の出し物は正式にカジノで決まり、約一カ月後の文化祭に向けて、私たちは放課後、皆で準備に勤しんでいた。

 私の班が担当するカジノはトランプゲーム。
 私はじゃんけんで負けてしまい、カジノディーラーを務めることになってしまった。

 カジノといったらバニーガールだよねー、真白は胸あるしいけるよ、なんて無茶振りされ、いやとんでもないあんな破廉恥な格好絶対嫌だと断固拒否し、すったもんだの末、メイド服+うさぎの耳というスタイルで落ち着いた。

 私と交代になる五十鈴は「メイド服なんて着るの初めてー」なんてはしゃいでいた。

 私の班はノリの良い女子しかいない。
 仲の良い女子が集まったおかげで私の班の準備は順調だった。

 去年も楽しかったけど、今年はもっと楽しい文化祭になりそうで、いまからわくわくしてしまう。

 そんな私の班とは対照的に、UNOの担当班に所属する小金井くんは、相変わらず空気を読まない発言で和を乱していたりする。もう皆慣れ切って、まともに取り合う人なんていないけれど。

 高校の文化祭もあと二回しかないんだし、楽しめばいいのに。
 彼はとてももったいないことをしていると思う。

「いまさらだけどさ、カジノってのはなかなかいいアイディアだよね。題材がゲームだから、お客さんたちにも楽しんでもらえるだろうし」
 みーこの発言で、私の注意は引き戻された。
 私とみーこは放課後の賑やかな教室の一角で、飾り付け用の花を作っている。

 私と同じ班のメンバー、五十鈴たちは買い出しに行き、他のクラスメイトたちは離れた場所でそれぞれ作業しているため、いま私の近くにいるのはみーこだけ。

「お化け屋敷よりは準備も楽だし」
 オレンジ色の小さな折り紙を折りながら、みーこがお化け屋敷を引き合いに出したのは、漣里くんのクラスではお化け屋敷をするらしい、と私が言ったせいだろう。

 漣里くんのクラスは一年三組。
 私たち二・三年がいる教室棟とは渡り廊下で繋がった、一年棟の二階。

「お化け屋敷っていったら段ボールも大量にいるよね。段ボールを黒く塗ったりとか、窓を塞いだりとか、設営がめちゃくちゃ大変そうだけど、成瀬くんはクラスメイトとうまくやってるのかねぇ」
 みーこは一年棟がある方向を見やった。