コンクリートの土手に二人並んで、夜空を見上げる。
 土手には私たちの他にもたくさんの人が座っていた。

 本格的なカメラを構えて写真を撮っている人もいる。
 夜空に打ちあがる花火は、本当に美しい。

「……綺麗だな」
 漣里くんは呟くように言った。

「うん」
「諦めなくて正解だっただろう」
「……うん。こんなに綺麗な花火が見られたのは、漣里くんのおかげだよ。私一人じゃ諦めるしかなかったもの」
 漣里くんの隣で私は微笑んだ。
 花火が見れたことも嬉しいけど。
 漣里くんが傍にいる現実が、何よりも嬉しい。

「……ねえ、漣里くん」
 肩を並べて夜空を見上げながら、私は呼びかけた。

「何」
「手を繋いでもいい?」
 漣里くんは考えるように黙った。

「やっぱりダメだよね」
 えへへ、と苦笑する。

「ごめん、忘れ」
 て、と言うよりも先に、私の手に漣里くんのそれが重なっていた。
 驚いて、漣里くんの横顔を見る。

 彼の頬は、夜でもわかるくらい、赤くなっている。

「…………」
 私は手をくるりと半回転させて、彼の指に自分の指を絡めた。
 さすがにこれは拒否されるかなと思ったけど、彼は振り解こうとはしなかった。

「……手のひらには相手の心に訴える力があるんだよな」
「? うん」
「なら、俺が考えてることもわかる?」
「……これからもよろしく?」
 私は花火を視界の端に捉えながら、首を傾げた。

「……。まあ、それでもいいや。これからは彼氏彼女として、改めてよろしく」
「こちらこそ」
 連続で花火が上がり、私は正面に向き直った。
 終わりに差し掛かり、次々と花開く花火に目が奪われる。

 ぎゅっと、繋いだ指先に力をこめる。
 綺麗だね。それを伝えるために。

 彼は手を握り返してきた。
 言葉なんていらない。
 私の手を握り返してくる温もりがあれば、それだけでいいと、そう思った。