成績も容姿も普通。褒められるような特技もなし。
私の魅力を挙げてくださいっていうアンケートを取ったら全員白紙で出されてしまいそうなレベルなのに?
「僕は真白ちゃんと漣里が好き合ってるように見えたから諦めてたんだ。でも、いま話を聞いて、そうじゃないってわかった。真白ちゃんは漣里のことが好きなわけじゃないんでしょう? だったら僕と付き合ってよ。絶対に後悔させない。大事にするから」
「え、いや、でも……」
「僕の彼女になるのは嫌?」
葵先輩は私の手を持ち上げて、唇に近づけた。
まるでキスを落とす寸前のような、求婚されているようなポーズ。
胸がドキドキ騒いで、頬が熱くなる。
ちょっと待って?
本当に待ってください!?
急展開すぎて脳がついていけないんですけど!?
「え、え、えと、あの……」
何かが。何かが物凄く間違っている気がする。
そうだ、何より重要な主役の人物が違う。
王子様の相手役はお姫様じゃなくちゃいけない。
こんな展開が許されるのはシンデレラだけだ。
物語の世界だけでしょう!?
私じゃダメだ。
私なんかじゃもったいない。
それに――それに、何より――
ふっとよぎったのは、私の手を握った漣里くんの手の感触。
あの手と、この手の温もりは、違うんだ。
そう思った瞬間、私は葵先輩の手から抜き取るように自分の手を引っ込めていた。
「……すみません。お気持ちは嬉しいんですが、無理です。先輩の彼女にはなれません」
だって、気づいた。
たったいま、気づいてしまった。
この手じゃないって。
『違う』って、心が強く訴えた。
皆から王子様と讃えられている人でも、違うんだ。
私の心にいるのは、この人じゃない。
「いま誰の顔が思い浮かんだ?」
「……漣里くんです」
「そう、良かった」
「良かった?」
ふられたにしては違和感しかない台詞に、私はきょとんとしてしまう。
「ごめん、いまの告白は嘘なんだ」
「へっ!?」
「二人を見てたらじれったくなっちゃって。でも、これでハッキリわかったでしょ? 自分の気持ち」
「それは……まあ……」
赤面して俯く。
――私は漣里くんのことが好きなんだ。
葵先輩に、はっきり自覚させられてしまった。
そうか、私、漣里くんのことが好きだったのか……。
思い当たることはある。
というより、思い当たることしかない。
漣里くんと知り合ってから、私、彼のことばっかり考えてたもの。
彼から連絡が来てないか、無駄にスマホをチェックしたりしてたし。
くだらないラインのやり取りをするだけで楽しかったし、会うたびに胸がドキドキした。
つまり、総じて、好きってことだ。
「……でも、やっぱり、どんな理由があろうと偽の告白はズルいですよ」
唇を尖らせる。
「ごめんごめん」
葵先輩は両手を合わせた。
「明日は楽しんできてね。うちの不器用な弟のことをよろしく。できれば末永く」
「末永くって……何の話なんですか、もう。そもそも漣里くんは私のことを友達としか思ってませんよ」
「……。うん。はっきり言わない漣里が悪いね。帰ったら発破をかけとこう」
「え? いま何か言いましたか?」
声が小さくて聞き取れなかった。
「ううん、なんでもない。さ、帰ろう。真白ちゃん。遅くなるとご両親が心配するよ」
そう言って、葵先輩は歩き出した。
私の魅力を挙げてくださいっていうアンケートを取ったら全員白紙で出されてしまいそうなレベルなのに?
「僕は真白ちゃんと漣里が好き合ってるように見えたから諦めてたんだ。でも、いま話を聞いて、そうじゃないってわかった。真白ちゃんは漣里のことが好きなわけじゃないんでしょう? だったら僕と付き合ってよ。絶対に後悔させない。大事にするから」
「え、いや、でも……」
「僕の彼女になるのは嫌?」
葵先輩は私の手を持ち上げて、唇に近づけた。
まるでキスを落とす寸前のような、求婚されているようなポーズ。
胸がドキドキ騒いで、頬が熱くなる。
ちょっと待って?
本当に待ってください!?
急展開すぎて脳がついていけないんですけど!?
「え、え、えと、あの……」
何かが。何かが物凄く間違っている気がする。
そうだ、何より重要な主役の人物が違う。
王子様の相手役はお姫様じゃなくちゃいけない。
こんな展開が許されるのはシンデレラだけだ。
物語の世界だけでしょう!?
私じゃダメだ。
私なんかじゃもったいない。
それに――それに、何より――
ふっとよぎったのは、私の手を握った漣里くんの手の感触。
あの手と、この手の温もりは、違うんだ。
そう思った瞬間、私は葵先輩の手から抜き取るように自分の手を引っ込めていた。
「……すみません。お気持ちは嬉しいんですが、無理です。先輩の彼女にはなれません」
だって、気づいた。
たったいま、気づいてしまった。
この手じゃないって。
『違う』って、心が強く訴えた。
皆から王子様と讃えられている人でも、違うんだ。
私の心にいるのは、この人じゃない。
「いま誰の顔が思い浮かんだ?」
「……漣里くんです」
「そう、良かった」
「良かった?」
ふられたにしては違和感しかない台詞に、私はきょとんとしてしまう。
「ごめん、いまの告白は嘘なんだ」
「へっ!?」
「二人を見てたらじれったくなっちゃって。でも、これでハッキリわかったでしょ? 自分の気持ち」
「それは……まあ……」
赤面して俯く。
――私は漣里くんのことが好きなんだ。
葵先輩に、はっきり自覚させられてしまった。
そうか、私、漣里くんのことが好きだったのか……。
思い当たることはある。
というより、思い当たることしかない。
漣里くんと知り合ってから、私、彼のことばっかり考えてたもの。
彼から連絡が来てないか、無駄にスマホをチェックしたりしてたし。
くだらないラインのやり取りをするだけで楽しかったし、会うたびに胸がドキドキした。
つまり、総じて、好きってことだ。
「……でも、やっぱり、どんな理由があろうと偽の告白はズルいですよ」
唇を尖らせる。
「ごめんごめん」
葵先輩は両手を合わせた。
「明日は楽しんできてね。うちの不器用な弟のことをよろしく。できれば末永く」
「末永くって……何の話なんですか、もう。そもそも漣里くんは私のことを友達としか思ってませんよ」
「……。うん。はっきり言わない漣里が悪いね。帰ったら発破をかけとこう」
「え? いま何か言いましたか?」
声が小さくて聞き取れなかった。
「ううん、なんでもない。さ、帰ろう。真白ちゃん。遅くなるとご両親が心配するよ」
そう言って、葵先輩は歩き出した。