翌日、葵先輩が深森食堂に来てくれた。
イケメンの登場に、食堂は大いに盛り上がった。
一番盛り上がっていたのは私の両親だった……困ったことに。
エビフライ定食を注文した葵先輩は、私と知り合ってから漣里くんが楽しそうだ、ありがとう、とお礼を言ってきた。
いやいや私は何もしてません、と私は慌てた。
今度はパフェを食べに行くんだって? と葵先輩が聞いた。
はいそうです、と答えてから、私は思い切って葵先輩も一緒にどうですかと誘ってみた。
いや遠慮するよ、楽しそうな弟の邪魔はしたくないからね、と葵先輩は意味ありげに笑った。
帰り際、私は葵先輩ともラインを交換した。
夏休みになってから連絡先が二件も増えた。嬉しかった。
それから二日後の夜。
自室で夏休みの課題をこなしていると、不意に机の上のスマホが震えた。
取り上げて確かめると、表示されている名前は『成瀬葵』。
えっ、葵先輩?
私はびっくりして、急いで電話に出た。
「もしもし、真白です」
『真白ちゃん、こんばんは。いま大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です」
私は最近、店の手伝いをしていない。
というのも、バイトの募集に応じて大学生が来てくれたから。
よっぽど忙しいときは呼び出しがかかるだろうけど、基本的には自由の身になった。
『良かった。あのね、ちょっと助けてもらえないかな? 漣里が落ち込んでるんだ。今朝、飼ってたハムスターが死んじゃって。もう二年半も生きてたから、寿命だね』
「そうなんですか……」
もちまるはおじいちゃんハムスターだと漣里くんは言っていた。
『漣里はもちまるのお墓の前でぼーっとしてるんだ。なんか見てられなくて』
そ、それは、聞くだけで物悲しくなる光景だ。
漣里くんがもちまるたちにかけていた愛情は、私も知っている。
愛するペットを失って悲しまない人なんていない。
漣里くんの気持ちを想像すると、胸が苦しくなった。
『だからさ、真白ちゃん。励ましてあげてくれないかな』
「……はい」
とは言ったものの、私になにができるんだろう。
どんな言葉をかけたって、ペットを失った事実は変えられないし、漣里くんの悲しみは消えない。
それでも。
傍にいることくらいなら……
私はきゅっと唇を噛んでから、口を開いた。
「……いま漣里くんは家にいるんですよね?」
『うん。え、もしかして来てくれるの? わざわざ』
葵先輩は驚いたような声を出した。
「はい。少しだけお邪魔しても良いですか?」
葵先輩の答えは『もちろん。大歓迎』だった。
イケメンの登場に、食堂は大いに盛り上がった。
一番盛り上がっていたのは私の両親だった……困ったことに。
エビフライ定食を注文した葵先輩は、私と知り合ってから漣里くんが楽しそうだ、ありがとう、とお礼を言ってきた。
いやいや私は何もしてません、と私は慌てた。
今度はパフェを食べに行くんだって? と葵先輩が聞いた。
はいそうです、と答えてから、私は思い切って葵先輩も一緒にどうですかと誘ってみた。
いや遠慮するよ、楽しそうな弟の邪魔はしたくないからね、と葵先輩は意味ありげに笑った。
帰り際、私は葵先輩ともラインを交換した。
夏休みになってから連絡先が二件も増えた。嬉しかった。
それから二日後の夜。
自室で夏休みの課題をこなしていると、不意に机の上のスマホが震えた。
取り上げて確かめると、表示されている名前は『成瀬葵』。
えっ、葵先輩?
私はびっくりして、急いで電話に出た。
「もしもし、真白です」
『真白ちゃん、こんばんは。いま大丈夫かな?』
「はい、大丈夫です」
私は最近、店の手伝いをしていない。
というのも、バイトの募集に応じて大学生が来てくれたから。
よっぽど忙しいときは呼び出しがかかるだろうけど、基本的には自由の身になった。
『良かった。あのね、ちょっと助けてもらえないかな? 漣里が落ち込んでるんだ。今朝、飼ってたハムスターが死んじゃって。もう二年半も生きてたから、寿命だね』
「そうなんですか……」
もちまるはおじいちゃんハムスターだと漣里くんは言っていた。
『漣里はもちまるのお墓の前でぼーっとしてるんだ。なんか見てられなくて』
そ、それは、聞くだけで物悲しくなる光景だ。
漣里くんがもちまるたちにかけていた愛情は、私も知っている。
愛するペットを失って悲しまない人なんていない。
漣里くんの気持ちを想像すると、胸が苦しくなった。
『だからさ、真白ちゃん。励ましてあげてくれないかな』
「……はい」
とは言ったものの、私になにができるんだろう。
どんな言葉をかけたって、ペットを失った事実は変えられないし、漣里くんの悲しみは消えない。
それでも。
傍にいることくらいなら……
私はきゅっと唇を噛んでから、口を開いた。
「……いま漣里くんは家にいるんですよね?」
『うん。え、もしかして来てくれるの? わざわざ』
葵先輩は驚いたような声を出した。
「はい。少しだけお邪魔しても良いですか?」
葵先輩の答えは『もちろん。大歓迎』だった。