「うん、私も菜々に対してそんな感じを持っているから……よく分かる」
「……つうかさ、最近のおまえには違和感があったんだよな。それって、俺のせいだったのかな……」
「違和感?」
「だから、確かに元々の雰囲気が似てなくもないんだ、宮城と。けど、ここ最近は似せようとしていないか? どんどんおまえらしさが消えて、宮城に寄せていっているようにしか見えねえ。傍にいると影響されるんだなって思っていたけど、今思えば、俺があいつを気にしているっておまえに指摘されたころからだって思うんだ」
「……えっ……?」
「もしもそうなら、マジでごめん。だけど、そんな風に自分を殺すのはやめろよ」
そんなつもりは無かった。
だけど、テッちゃんがそう言うなら、そうなのかもしれない……。
私は自分自身にショックを受けていることを感じていた。フラれたこともショックだけど、無意識にテッちゃんの好きな菜々に似せようとしていたのかもしれないって、そこに納得が出来てしまう自分にもショックを受けていた。
ちゃんと食べたのか、どんなきっかけで帰ることになったのか覚えていないけれど、二人で一緒にファーストフードから出て駅に向かった時に、私のスマホのメッセージ受信音が鳴った。
菜々からだった。
『目の前のファミレスから二人が見えるよ』
思わず顔を上げてキョロキョロと見回すと、駅に直結しているファミレスの窓から菜々とスミレが手を振っているのが見えた。
そうだ、報告するようにって言われていた気がする。菜々もスミレも私たちが相思相愛だと疑っていないのだろう。
何も気がついていないテッちゃんは、歩きながらスマホをいじっている。
私は咄嗟にテッちゃんに寄りそって、ピースサインを二人に見せた。
どうしてそんなことをしてしまったのか自分でも分からない。二人はきっと成功したと思っているに違いない。
だけど、今の私にはそんな見栄を張ることしか出来なかった。
じゃないと、フラれちゃったんだとこんな駅前で大声で泣き出してしまうかもしれない。
そして、私の記憶はそこで途切れている……。