それからは、最近のスミレのノロケ話を聞いたりと、ゆっくりと和やかな時間を過ごした。


 外が暗くなった頃に彼女が帰ると、私はやっとルイを手に取ることができた。そして、その洋服の下に隠された手紙を探した。

 出てきたのは真っ白な封筒だった。
 しっかり糊づけしてあるけれど、私がこんな封筒を選ぶのかな?という疑問はあった。

 たまたま近くにあった封筒に入れた、という感じの物で。

 封を切ると、中からは黄金色の菜の花畑に女の子と犬が描かれた、まるで絵本の挿し絵のような便箋が出てきた。

 これは、私が買ったと思えるような趣味のものだった。

 そして、封筒の中には何か固い小さなものが入っていることに気づき、中の物を出してみた。

「SDカード……?」

 この二週間で撮った写真か何かだろうか?
 あとで確認してみよう。

 この手紙と何か関係があるかもしれない。

 私は高鳴る鼓動を抑えながら、自分が書いたはずの手紙を広げた。

 確かに私の字で『親愛なる菜々へ』と書かれている。


『親愛なる菜々へ

 まずはじめに、ここまでたどり着いてくれて、ありがとう。

 最後の最後に、こんな楽しくもない宝探しをさせてしまってごめんね。

 いきなり警察から連絡がいって、謎かけのような手紙を受け取って驚いたと思います。私とは対面したのかな? 時間が無くて、髪も服装も真珠紅で過ごしていたときのままだから、高校を入学してからずっと双子みたいだって言われてきた菜々とは似ても似つかなく見えちゃったかな。

 私はね、菜々と似ていると言われて嬉しかったよ。
 いつも優しくて可愛い菜々が大好きだったから。

 客観的に見た目とか雰囲気ってものは分からなかったけれど、私たちって一緒にいるときの感覚が似ているよね?

 他の友達と一緒にいるときも楽しかったけど、菜々と一緒にいるときは穏やかな心で飾らない自分でいられました。双子というよりは、もうひとりの自分みたいな不思議な感覚。

 そんな菜々は私の大切な親友です。

 それを大前提に、これから書くことを穏やかな気持ちで読んでもらえたら嬉しいです。』


 菜々が読むことを前提にした、そんな書き始めだった。
 ここまで読むだけで、私は本気で死ぬ気だったんだとわかる。

 警察から菜々に連絡が行き、菜々が必死に探してくれるだろうと予想して――――。

 うん、きっと菜々なら探してくれただろう。

 だけど、実際は私が見つけて読んでいる。

 死ぬことも、菜々に見つけてもらうことも叶わず。
 そう思うと、二週間前の私が滑稽に感じてしまう。

 思わず苦笑いしながら、私は続きを読んだ。