完敗だなって思うと、涙ではなく笑みがこぼれてしまった。
「そっか」
「ごめん」
「……菜々のことが本当に好きなんだね」
「……だと思う。女子を好きになったことってあんまりねえから、よく分かんなかったけど。なんか、はじめてなんだよな、こういう感情って」
最近は何度も聞いているような話だけど、さすがに今聞くのは心に痛すぎる。だけど、バカな私は笑いながらそんな話を続けてしまう。
「うん、今までにない顔しているもん、テッちゃん」
「ハハッ。情けねえなぁ」
情けなくなんてない。だけど、物凄く羨ましくなるの。菜々のことが。
嫉妬ってものを初めて知ったの。醜い自分をイヤというほど感じてしまうの。
私はきっと、そんな自分に耐えられなくなって告白したのかもしれない。だけど、余計に心が醜くなってしまうよ……。
「……私ね、入学した時から菜々とよく似ているって言われるんだけど、二年生になってから頻繁に言われるようになったんだよね」
「……俺には似ているように見えたことは無いけどな。おまえおまえだし、宮城は宮城だ」
普通なら嬉しい言葉のはずだけど、それはテッちゃんにとって私は菜々とは違って特別に思えないと言われた気持ちになって泣きそうになる。
「その違いって何? テッちゃんにとって、菜々はどうして特別なの?」
「おまえだって特別だよ。家族って特別な存在だろ?」
「うん、ありがと。けど、恋愛感情っていうの? テッちゃんにとって菜々に魅かれるのはどんな部分?」
「……空気感が特別なんだよな。一緒にいる時の空気感。あいつ、ほんわりしてんだろ? なんか気が抜けるっていうか。俺はよくしゃべる方だとは思うんだけど、あいつと一緒にいたら言葉なんかなくても通じるもんがあるって気がする」
菜々と一緒にいる時の空気感は私も好きだった。そういう意味では、私にとっても特別な存在だったから……。
テッちゃんの言葉が心で分かり過ぎてしまって、完敗だと白旗を上げるしかなかった。