だけど、テッちゃんは私を精一杯想ってくれた。

 たとえそれが恋愛感情じゃなくても。私のことを恋愛対象として見ることなんて一生なかったとしても。
 テッちゃんは私を大切にしてくれて、愛情をいっぱいくれていた。

「テッちゃんにはいっぱいの愛情をもらったの。お母さんがくれなかった愛情を。ただ、それが恋愛ってものじゃないだけで……」

「そう。ナナちゃんは素敵な人を好きになったんだね」

「――――うん」

 再び涙が溢れてきて、ジュリちゃんの肩に顔をうずめた。

「素敵な恋をしたね、ナナちゃん。その自分を誉めてあげようよ。私なんて、いつもろくでもない男に引っかかってね。それまでの記憶なんて全部抹消したいと思うくらい。そんなどうしようもない奴と知り合ったから今、ここにいるの」

 テッちゃんとの記憶が無くなればいいなんて思わない。
 だけど、だからと言ってフラれたのは辛いし、菜々と一緒にいる姿を見たくない。

「テッちゃんとの想い出は大切だけど……。これから一緒に生きていきたいのに、それが出来なくなったのが辛い」

「大丈夫よ、ナナちゃん。大丈夫、見る目のあるステキな人に恋が出来たんだもん。そのうちまた、そういう人が現れるよ。ナナちゃんが今の彼よりもっと素敵だと思える人がね」

 ジュリちゃんはいい加減なことを言っている、と思った。
 それでも、そのジュリちゃんの気持ちも嬉しくて。

「ナナちゃん、結果より過程だよ。その人に恋をしていたナナちゃんが輝いていたなら、私はそのことを祝福する。だって、ナナちゃんはまた素敵な人を選んで素敵な恋ができるってことだもん」
  
 そんな優しいジュリちゃんの言葉が、心の中に固まっていたドス黒い感情の塊をどんどん溶かしていくのを感じた。
 
 そして、泣き止んだ頃には胸につかえていた何かが流れ落ちていて、心の中がさっぱりしたような気がした。