そう、ルイの意味は〝彼〟だった。
今、目の前にいるルイは〝Shiin-Rai〟の上にある部屋にいる。
意味がわからなかった〝信頼のうえにある大好きな彼〟はこのルイだろうと思えたのだ。
ということは、このルイに菜々への最期の手紙を預けているんだ。
ギュッと抱くと、そのギンガムチェックのシャツの向こうにガサガサと紙が入っている感触がある。
それはわかったけれど、今ここでママと来夢さんの前でそれを出して読むことは出来ない。
ルイを持ち帰ってゆっくり読もうと思った。
それよりも、今はスマホだ。私はスマホをタップすると、特にロックがかかっていないことに気づいた。
「……初期化されている」
考えてみたら、自分でここにスマホを置いていくと決めたなら当然だろうと思えた。
「――――焦らず、ゆっくり思い出せばいいんじゃない? お店の女の子たちと話してみる? ナナちゃんの他にも三人住んでいるわよ。仲良くしていた子もいるから、何か思い出すかもしれない」
女の子、というワードに胸がドキリと高鳴った。
私を殴って逃げたというのは、高校生から二十代前半の女の子だったという話だから。
もしかしたら、ここにいる誰かかもしれない。
そう思うと緊張感が高まり、注意深く彼女たちを見ようと思った。
「声かけてこようか?」
来夢さんが玄関に向かった。
「ここは基本的には男子禁制なのよ。となりのジュリちゃんにだけ声かけて。上の子達はジュリちゃんに呼んでもらいなさい」
ママに言われて、来夢さんは笑いながら出ていった。
ジュリちゃん――――。
私の脳裏にあのミルクティ色の巻き髪の華やかな女の子が浮かんだ。
何度となくジュリちゃんのことは記憶に上がってくる。
思い出しているわけではないけれど。
仲が良かったのか、それとも何か印象的なことがあったのか――――?