告白の言葉は覚えていない。ひと言で終わらせなかったとは思う。
前置きを何か話して、何か決め手の言葉を言ったのだろう。
覚えているのは、彼が目を見開いて口に持って行ったポテトをくわえたままフリーズしてしまったことだった。
驚いている。困っている。きっと予想外だったんだろうな。
そんな気持ちが雪崩のように押し寄せてきたけれど、そこに後悔は無かった。
ポトリとテッちゃんの口からポテトが落ちて、ごくりと口の中にあったものを飲み込んだ音が聞こえた。そして、目を見開いたままストローに口を付けてジュースを一口飲むと、小さく息を吐いて私を見た。
「俺、宮城が好き……なんだ」
「うん、知っている」
「……だよな。おまえに指摘されて自覚したんだから、俺」
「うん。私ね、テッちゃんを好きだから、気がついたの」
「ああ……そっか……ごめん」
本当に申し訳なさそうにテッちゃんが頭を掻いてうつむいた。
「謝らないで。人の想いはどうしようもない」
「うん、だよな」
「だから、私の想いもどうしようもないの」
「……だよな……」
歯切れが悪く口ごもるテッちゃんは、今までに見たことがないほど困っているのが伝わってくる。
そんなテッちゃんを見て傷つく自分に、恋の成就なんて期待していなかったんだと言い聞かせる。こうなることは、ちゃんと分かっていた。
「俺……おまえのことは大切に思っているんだ」
こちらを見ずに、それでもハッキリとそう言った。その言葉に嬉しさがこみあげる。だけど、そこから続く言葉も予想はできていた。
「ガキの頃から……物心つくころから近くにいてさ、ほとんど家族じゃん。つうか、マジで家族っつうか……血の繋がった妹っていねえけど、夕璃はそんな感じなんだ」
その言葉に嘘偽りがないことも知っている。だからこそ、困ってしまっていることも。
「だから、それ以上でも以下でもない。おまえには大切な家族だって気持ちしか持てない」
「……だけど、私は恋愛対象としてテッちゃんが好きなの。それでも、今後変わる可能性はないの?」
「ない」
真っすぐ私の目を見て即答だった。