まるで逃げるように裏口から出ると、テッちゃんはホッとしたような表情になった。

「で? なんか話があったんだよな? 悩み事か?」

「う、うん。まあね……」

「なに? 進路のこととか? 部活のこと?」

 そんな言葉がポンポンと口から出てくるテッちゃんを見ながら、昔から何でも話してきていたなって思った。

 確かに進路のことは悩んでいる。部活はチアリーディング部でそっちの大会が夏休み明けにある。うちの部は強豪だから、その大会で成績が良ければ、注目されて大学へも部活推薦で行ける道もある。

 だから、今回の大会では絶対にレギュラーになるだけではなく、良いポジションでいい演技を見せたい。

 そんな話を前にテッちゃんにしていたことを思い出した。

「……部活は順調だよ。結構いいポジション取れたの。あとはプレッシャーに負けずに頑張るだけ」

「そっか、良かったじゃん。一年の頃から認められてきたし、頑張ってきたもんな」

 他人事なのにまるで自分のことのように嬉しそうなテッちゃん。

 だけど、それは兄貴のような気持ちなんだろうって知っている。小さい頃は泣き虫だった私をよく助けてくれて、泣かなくなった今でもそんなイメージなのか、ずっと気にしてくれているのが分かる。

「あっ、やっぱり母さんと話しとけば良かったかな」

 急に思い出したように舌打ちをすると、へへッと照れ笑いを浮かべた。こういう表情をするときには菜々がらみのことだって、最近は敏感に察知できてしまう。

「さっきのママ友ってヤツ? の中にさ、たぶん宮城の母ちゃんもいるんだよな。最近、仲がいいらしくってさ」

「そっか。私も菜々のお母さんには会ってみたかったな」

 私の家は学校からそう遠くなく、日中は誰もいないこともあって菜々は何度も遊びに来たことがあった。だから、今度は菜々の家にもお邪魔するって話もしているから、お母さんに会ってみたいのは本心だった。

 だけど、笑顔でそんなことを言いながらも心は傷ついて痛かった。

 私はフラれてしまったら、テッちゃんを応援するなんて出来るのだろうか……?

 きっと、このままこうやってテッちゃんの恋の話を聞くことも限界なのかもしれない。だとしたら、今後はどうなってしまうんだろう。

 そんなことを考えながら、もう引き返す気持ちは無くて、告白するという一本道の自分の心にも気がつく。

 どんな結果になっても、私はテッちゃんが好きだし、菜々のことも好き。それが変わらなければそれでいい。

 私は覚悟を決めて、学食とは違って混んでいる駅前のファーストフードに入った。