それでも、日に日にその心が引っ掛かり、テッちゃんと菜々の関係が気になる自分を感じていた。

 そこからは、それが恋なんだと認めるまでに、そんなに時間はかからなかった。

 とはいえ、テッちゃんが菜々を好きなんだということも、毎日一緒にいると確信できるほどよくわかった。

 テッちゃんが菜々を無意識に目で追っていること、彼女の天然さを見かけると口元を緩めて愛しそうな眼で見ていること、用もないのに構いにいくこと、忘れ物をすると席も近くないのに菜々に借りること。

「テッちゃんは、菜々を好きなの?」

 思わず聞いてしまったのは、菜々からもらった義理チョコを嬉しそうに受け取ったバレンタインの帰り道。

「へっ?」

 鳩がマメ鉄砲を食らった顔、っていうのはこんな表情だろうか。
 テッちゃんは目を見開いてフリーズした。

「まさか、自覚なかったの? あんなに露骨なのに」

 全く面白くも楽しくもないのに、思わず大げさに笑ってみせると、テッちゃんは考え込みながら頭を掻いた。

「そう……見えるのか?」

「ん?」

「だから、俺って宮城のこと、好きに見える?」

「うん、見える。ちがうの?」

 テッちゃんの質問を聞いて、心のどこかで『ちがうよ、俺が好きなのは夕璃だ』なんて言葉を期待してしまう、愚かな私がそこにいた。

「――――ちがわない……かな。たぶん」

 私の細やかな期待は外れてしまい、今まで見たことないほど照れた笑顔を浮かべたテッちゃんが私を見た。

「宮城には内緒な」

「――――うん、言わないよ」

 言うはずがない。
 だって、私はそこまでお人好しでもなければ強くもない。

 それからも、私はテッちゃんの仲良しの幼なじみであり、菜々の親友でもある自分であり続けた。

 二人とのこの関係を壊す気なんてない。

 だけど、日に日に心が苦しくなる。

 菜々を好きだと気づいたテッちゃんが積極的に菜々に近づいているのがわかる。

 幸か不幸か菜々の方は鈍感で、テッちゃんのことを友達以上に思ってないのもわかる。

 それなのに、二人の間にはどこか特別な空気に包まれていて、二人だけの世界が垣間見れるような気がした。

 それを見ていると完敗だった。
 私なんて入る隙はない。

 だったらせめて、二人を応援できる私でありたい。