だけど、私がフラれたテッちゃんの好きな人なのに。
いったい私はその手紙にどんなことを書いたのか、心の中がざわついていく。
もしも怨み言なんか書いていたら、と思うとゾッとする。
だって、死ぬほど思い詰めていたんだから。
最期になにを書くかなんて検討もつかない。
そんなこと、菜々には言えないけれど。
「ほら、菜々に書くならスミレにも書いていてもおかしくないじゃない? だって、行方不明になる前に早川君と会ったなら、スミレの方が私を心配している可能性があったんだから」
「考えてみれば、そうだよね。私は連絡がなくても、忙しいんだと思って気にしていなかったもん」
私の精一杯のごまかしに、菜々も同意して大きくうなずいた。
「それに、お父さんにさえ何も書いていない。誰かに発見されて警察が確認することを前提に、菜々宛てに書いているとしか思えない手紙なんて……」
「ねえ、あの中によくわからない謎かけがあったでしょ? あれって、私にだけわかる言葉が入っているのかな……?」
ふいに、背後で舌打ちする音がして、私たちをチラッと見てサラリーマン風の人が通りすぎていった。
横断歩道の前で立ち止まっていたから、どうやら人通りの邪魔になっていたらしい。
「とりあえず、もう一度夕璃の家に戻って一緒に考えよう」
「……うん」
どうしてこんなことになっているんだろう。
菜々と顔を合わせていると、大好きな親友であると同時に、テッちゃんの好きな人なんだと思ってしまう。
これを乗り越えるには、もう少し時間が必要だと思えた。
私を心配しているであろう菜々の真剣な横顔を見ていると、そんな彼女を見つめるテッちゃんの横顔が重なって見えた。
そう、私が気づいてしまったあの日…………。